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「里見の郷再発見伝」発行人  中嶋 講二 (高崎市金井渕町)


【略歴】「里見の郷」推進実行委員会事務局長として里見氏の顕彰に取り組む。2011年1月まで20年間経営した書店でギャラリーを併設し地域の文化活動にも尽力した。


「里見の郷」を再発見



◎地域の誇りや愛着発信



 自分が生まれ住んだ地域を第一とし、地域の独自性を重視する考え方をローカリズム=地域主義と言うそうです。地域とは何か、共同体・コミュニティーとは何か、いま問いかけています。地域を活用し、人と人との関係性を促し、地域を再発見できればと思います。今回は地域のささやかな企画展「里見の郷(さと)フェスティバル」と小冊子「里見の郷再発見伝」が創刊されたことを紹介します。

 高崎市の榛名地域の里見地区は、いにしえの地「里見の郷」です。5世紀後半に原倭人や渡来人が居住したとされる「剣崎長瀞西遺跡」や鉄床が発見された「宮谷戸遺跡」(現高崎市下里見公民館)に近く、国道406号は「古東山道」から分岐した街道でもあります。県内外で指折りの「くだもの街道」と呼ばれ、これからの季節は国道沿いに“里見梨”(榛名の梨)“剣崎桃”やブルーベリー、プラムの果樹園の直売所が70軒近く並びます。

 この旬の時季に合わせて、今年で第4回になる企画展「里見の郷フェスティバル」を開き、地域の魅力を発信します。毎回大好評の「梨園オカリナライブ」(会場・伜田(かせだ)梨園、運営・音響社スタージオン)、関東一円から参加者がある「里見天神山フルーツカップパラグライダー大会」(会場・富久樹園の里見天神山、運営・榛名パラグライダーパーク)、今回で第7回になる「里見氏に関する歴史講演会」などです。また、写真展、紙芝居、クラシックコンサート等も予定しています。地域全体に根を張るためには5年、10年と継続的に開催していくことが大事です。年月をかけて共感が波及していくのではないかと思います。

 国道406号を西進すると同市倉渕町です。歴史的な偉人で時代の先覚者である小栗上野介の終焉(えん)の地であり、“道祖神・ホタル・有機農業”の里=「小栗の里」(近年建設予定の名称)です。将来的には「小栗の里」と「里見の郷」が連動して、地域発信する企画展ができればいいなとも思っています。

 7月7日に待望のA4版小冊子『里見の郷再発見伝 里見氏のルーツを尋ねて』が創刊されました。表紙は「新田義貞投剣図」(鎌倉倒幕の錦絵)です。里見氏関係や室田長野氏、石井氏など、郷土歴史研究者が編集。歴史街道、里見の郷、散策地図の第2弾であり、季刊「上州風」29号(上毛新聞社刊、現休刊)に大きく特集されて以来のほぼ書き下ろしの小冊子です。県内の煥乎堂や戸田書店などで販売予定です。

 平成大合併で旧榛名町は高崎市に編入されました。地域の歴史や文化を埋没させないためにも、「地域の誇りと愛着」を保つ意味合いを込めて小冊子や企画展を継続することが、地域とは何かの一つの答えとも思っています。







(上毛新聞 2012年8月2日掲載)