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視点 オピニオン21
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デザイン事務所代表  平野 勇パウロ (太田市内ケ島町)


【略歴】ブラジル・サンパウロ市生まれ。89年に来日。2010年から太田市と大泉町を中心に、ブラジル文化を紹介する日本人向けのフリーペーパーを発行している。


いじめ問題を考える



◎個性尊重し合う環境を



 このごろ、学校のいじめ問題がよくメディアで取り上げられて話題になっている。いじめのニュースには敏感に反応してしまうものだが、実は日本に来て間もないころ、私もいじめにあっていた一人なのである。

 来日してまもなく、日本語も話せないまま小学5年生のクラスに入った。ランドセルを持っていなかったこと、学校に時計を持ち込んだりしてしまったことや、弁当のおかずがみんなと違っていたりしていたことなど、日本語どころか、文化・習慣も理解していなかったため、ささいなことが原因で、徐々にいじめへと発展していった。

 小学校では日本語の特別教室が設けられ、通常のクラスの授業を抜け出しては日本語の特別授業を受けていた。しかし、特別教室だけでは通常の授業にはついていけず、また、周りの同級生には通常の授業をさぼっているのではないかとも疑われてしまい、通常のクラスに戻る際は恐怖さえ感じることもあった。

 今思うと、日本語はもとより、教室の子どもたちと仲良くできる方法が学べる、日本の不文律についてアドバイスがあればよかったのかもしれない。

 日本の教育システムでは外形や考え方を含め、自己主張がとても難しい。以前に日系ブラジル人の子どもが自毛の明るい色の髪を黒に染めて学校に通わなければならない事例もあった。学校の規律は髪を染めることがいけないことなのか、それとも髪の色を統一させることが規律なのか。少しでも特徴のある子は問題視されてしまうようでは、いじめが発生しても仕方のないことだ。

 子どもたちは見えない縛りに不安を抱え、いじめという形でストレス解消をする。教育システムこそ、いじめを助長しているように感じられて仕方がない。

 日本とは反対に、ブラジルの学校では人種多様で、落第制度を採用し、各学年の生徒の年齢もバラバラであるため、子どもの価値観も自然に多種多様となっていく。お互いの個性を認め合い、そして尊重し合える環境こそ、豊かな心を築いていけるのではないのだろうか。

 いじめは気がつかない間に起きることが多い。日本のバラエティー番組もいじめに見えてしまうものもあり、いじめと遊びの線引きがとても難しいのである。

 教育現場だけでなく、社会全体が一丸となっていじめの原因を探り、いじめをなくしていかなければならない。そして、お互いの個性を尊重し合える環境こそ、いじめ問題を解く鍵の一つなのではないのだろうか。







(上毛新聞 2012年8月4日掲載)