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◎人の和は地域支える宝 3日に始まった沼田まつりは、きょう5日が最終日です。須賀神社、榛名神社の神輿(みこし)の渡御は勇壮で、お囃子(はやし)を奏でる「まんど」(山車)や女性だけで担ぐ天狗みこしも加わり、祭りは最高潮に達します。祭りを支えてくださっている実行委員会さん、関係者のみなさん、大変ご苦労さまです。 四百有余年の歴史を誇る沼田まつりは、もとは「おぎょん」と呼ばれ、今では市民のまつりとして、にぎやかに展開されています。一般市民がつくった神輿の団体もたくさんあり、祭りを大いに盛り上げてくれています。その中で今年、10周年を迎えた団体があります。 この団体が発足しようとしていたころ、メンバーが入会の確認作業をするため、ある飲食店に集まっていました。自分たちが担ぐ神輿はレンタルしようと話をしていたところ、それを聞いていた飲食店のご主人が「その神輿、買えるんじゃないか!」と。 このご主人は、知り合いの方を通して交渉してくださり、しかも本当に買える段取りまでしてくれました。友達でも、知り合いでもなく、たまたまその場に居合わせた人が、「神輿を担ぎたい!」という思いだけで集まった人たちに大きな力を貸してくれたのです。このご主人の男気あふれる行動が彼らの心を動かし、今では立派な神輿団体に成長しました。 はじめ、神輿を担ぐときは「一切酒を飲むな」と言っていたそうですが、それはさすがに無理。周りの人がどうしても酒を勧めてくれますから、厚意をむげに断るわけにもいきません。酔って周りの人に失礼のないように気持ちを引き締め、たばこも吸っているそばから吸い殻の缶を用意し、ごみを拾い、この団体が通った後には、ちり一つ落ちていません。 神輿を担ぐ人たちは威勢が良すぎて、一見乱暴にみえますが、話を聞いてよく観察してみると、なんともすがすがしい団体だということに気がつきます。 たくさんある神輿団体それぞれは、対立し合っているのかと思いきや、これもまた互いに教え合ったり、協力し合ったりしているというのです。先輩の神輿団体に教えを請い、協力を頼み、互いに良きライバルとして発展しているのです。 神輿だけでなく、祭りや地域の仲間は年齢もさまざま、職業もいろいろですが、お互い対等な関係で、とても良いお付き合いができます。なんのしがらみも、損得もない純粋な心こそが、地元を支えていく地域の宝なのです。 まつりを楽しみつつ、地域の本当の魅力を考えたいと思っています。 (上毛新聞 2012年8月5日掲載) |