,

視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
NPO法人みんなの未来研究所代表  須永 徹 (太田市由良町)


【略歴】元ジャパンビバレッジ環境部長。定年退職後、2009年9月にNPO法人みんなの未来研究所設立。県環境アドバイザー、県地域づくり協議会委員。


いじめ問題



◎人を思いやる心大切に



 滋賀県大津市で、中学2年生の自殺の原因がいじめではないかと問題になり、それに引きずられる形で、あちらこちらからいじめの話がたくさん出ています。

 いじめ問題は昔から枚挙にいとまがありません。それも子どもの世界だけではなく、地域でも会社でも、おおよそ人が社会生活を営むところであれば、いじめは存在してきました。地域内で無視して付き合わないのであれば村八分になるし、スポーツの世界でも先輩が新人に暴力をふるう行為とかがあります。会社内でのセクハラやパワハラも一種のいじめと言えなくもなさそうです。

 「昔はガキ大将がいて、あまりに度が過ぎるいじめにはストップをかけたもんだ。それに比べると今は陰湿だね」などという話も聞きますが、いじめはいじめに違いありません。

 こんなことは日本固有のものかと思ったら、どうやら世界中にあるようで、そうなると他人をいじめるというのは、人間のみが持つDNAかとも思えます。「いじめのない世の中なんかない」と、腹をくくって覚悟するしかないなんて、動物以下のレベルになってしまうようで悲しすぎるじゃありませんか。

 人は意識しなくても他人を傷つけてしまうことがあります。どんなに注意していても、人である限り、間違えないことはありません。あまりに経済原理のみが優先され、常に競争にさらされて「勝ち組」「負け組」と一喜一憂していては、人間関係はギスギスするばかりで、とても他人を思いやることはできないでしょう。

 こういった流れの中で、いじめはますます陰湿かつ巧妙になって、やはりなくなることはないのかもしれません。

 しかし、誰かを死に至らせないよう目配せや心配りはもっとできるはずです。そのための地域内でのコミュニケーションづくりはもちろんですが、学校と地域とのつながりの強化(もう、何年こんなことを言い続けているのでしょう?)にも、今までの考え方や仕組みを変えるつもりで、本気で取り組まなくてはならないのではないでしょうか。

 気になったのは、あの大津の校長先生や教育委員会の対応です。問題が発生しても最初のうちはうそと隠蔽(いんぺい)で固められたような会見は、原発事故のときの誰かさんたちとそっくりでしたね。これが日本人の誰もが持っている固有のDNAでなければいいのですが。

 「人類の最終兵器は心!」という言葉があります。今こそ私たちは、この最終兵器を手にするときにあるのではないでしょうか。






(上毛新聞 2012年8月11日掲載)