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NPO法人「三松会」理事長  塚田 一晃 (館林市高根町)


【略歴】東京都出身。曹洞宗大本山總持寺などで修行後、源清寺副住職に着任。1995年に三松会設立。両毛地域初の阿波踊り団体「上州みまつ連」代表も務める。


無縁社会と孤独死



◎失われた助け合い精神



 先日、一人の人が病院で三松会のスタッフにみとられ亡くなりました。その方は独り暮らしで、体調を崩し病院に入院したのですが、金銭管理は悪友がしており病院の入院費も滞納していました。このため、行政と病院からの依頼で後見人となり、その方の金銭管理などの対応をしていました。ところが亡くなって分かったことは、その方には奥さんも息子も娘もいたのです。あぜんとしました、なぜ、奥さんも子どももいるのにこのようなことになったのでしょうか。

 最近は社会問題にもなり、マスコミでも大きく取り上げられているのが「孤独死」や「無縁社会」です。孤独死する人の多くが身寄りのない人ととらえられ、なぜもっと早くに気がつかなかったのかなど、発見する側ばかりが問題視されています。

 身寄りのない人というのは本当にいるのでしょうか。日本は戸籍制度がしっかりしていて、親族は探せば必ずといっていいほど見つかります。本当に天涯孤独の身寄りのない人は限りなく少数だと思います。

 酒やギャンブルに溺れ、破綻した生活や性格などが嫌われた人や、多重債務に苦しむ人が、親族らから見放されて孤立し、対応を拒否されることにより誰の助けも得られなくなった結果、孤独になり身寄りのない人になるケースがほとんどだと思います。心にゆとりのある方や生活に余裕のある方は、親族らから支援の手が差し伸べられるので孤独死するようなことは少ないのではないのでしょうか。

 しかし、将来設計をきちんと立てていても詐欺被害等にあい、結果、荒れた生活を余儀なくされる人も近年は増えています。生活にゆとりがなくなり、福祉サービスが充実しても費用面でサービスを受けることができず孤独死してしまうというのも一つの原因になっていると思います。

 では無縁社会をなくし、孤独死を予防するにはどうしたらいいのでしょうか。今の世の中、孫まで一緒に生活している「サザエさん」のような家庭はまずなくなってしまいました。核家族が増えることにより助け合いの精神が失われ、自分で何でもできると思い込んでいる人が増加の一途をたどっているような気がしてなりません。

 生活保護受給者が年々増え続けるのも、いろいろな要因があると思いますが、助け合いの精神が失われたことが大きいと思います。日本の1億人すべてがサザエさん一家のような生活をしているならば、無縁社会という言葉はなくなり、孤独死する人もいなくなることでしょう。まず生活文化から変えなくては有効な解決策は見いだせないと思います。





(上毛新聞 2012年8月12日掲載)