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視点 オピニオン21
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紙芝居屋めるへんしあたあ主宰  信沢 淳一 (安中市松井田町)


【略歴】大東文化大を卒業後、郵便局に34年間勤務。2009年に紙芝居屋めるへんしあたあを設立、紙芝居の出前公演を有料化した。演じ方や制作の指導もしている。


紙芝居作り講座



◎地域の昔話を語り継ぐ



 今年の群馬県は、紙芝居が熱くなっています。特に高崎地域では、紙芝居手作り講座が何度も開催されます。その一つ、高崎市国府公民館では私が講師を務めました。

 テーマは「そうだ紙芝居を作ろう」です。「初めての紙芝居作り」を合言葉に、国府地区の民話を題材に紙芝居を手作りする講座です。11人が参加しました。1回2時間の3回講座で、脚本づくりからこま絵、本書き、そして演ずるまでを行う講座です。11人が3つの班に分かれ、班のひとりひとりが絵を分担して仕上げました。各班の紙芝居は「へそぬきかんのん」「オニと氷もち」「ミソサザエといのしし」で、完成した作品は群馬図書館に保存され、自由に見ることができます。

 旧金古地区の5公民館では、地域の民話や昔話などは活字だけではなかなか読まれないので、紙芝居にして演じることで語り継ごうと決まり、今年、各公民館で続々と紙芝居作りが始まりそうです。また、国府公民館では講座に参加した方がその後、紙芝居倶楽部を結成して年間を通して紙芝居を演じたり、国府地域の昔話を紙芝居に仕立てたりする活動をします。 地元の民話紙芝居は、老人会や生き生きサロンなどでも大変喜ばれています。「タイトルは知っていたが、初めて内容がよく分かった」「なつかしいからこの地域の紙芝居を公演時に入れてください」など、毎回反響があります。

 民話を紙芝居に手作りする時に大切なのは、地域のことだけに、話の元になった場所や地元の方の話など、再調査や取材が必要です。できあがってからクレームがつくこともあります。ただ、何十行しかない民話を12枚ほどの紙芝居にして、会話形式で起承転結にするには、思い切ったデフォルメも必要です。

 演じ方も大事です。まず幕紙を作り、舞台を使いましょう。照明も作りましょう。紙の芝居です。舞台も観客の目線の高さに合わせましょう。

 紙を引く時は、ゆっくり引く、早く引く、途中で止める、揺らすなど場面にあわせて使い分けましょう。

 物語型紙芝居は絵本と違い、役になりきることも必要です。男の人は低い声で、女の人は高い声で。声の高さ、速度、強弱、感情表現も使い分けましょう。ト書きは普通に語りましょう。一番大切なのは「間」です。話と話の「間」はドラマにアクセントを付けます。期待させる「間」、余韻の「間」、観客を見ながらつかみましょう。

 最後も余韻を残して「おしまい」とか、「どっぴんしゃん」と言って終わります。演じ手が観客全部を最後までうまく引っ張っていく醍醐味(だいごみ)は楽しいし、うれしいです。一期一会の勝負。






(上毛新聞 2012年8月17日掲載)