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大間々町商工会青年部長  吉沢 正樹 (みどり市大間々町)


【略歴】桐生工業高、日本大生産工学部卒。大手建設会社を経て、父親が経営する測量器メンテナンス会社に入社、現社長。2011年4月から大間々町商工会青年部長。


まつりと地域



◎にぎわいや伝統次代へ



 「祈り」を込めた大間々祇園まつりも無事に終わった。383年の歴史を持つ大間々祇園まつりの裏側はあまり知られていない。町内全体会議や地区ごとの打ち合わせがあり、スケジュール・予算等の調整、山車の飾り付け、ちょうちん飾り、しめ縄張り…。手間隙かかることは言うまでもない。中でもお囃子(はやし)の練習は子どもたちが何日も前から始めている。練習ではベテランの先輩方が熱心に教え、さらに上級生が下級生にたたき方を教える。できるまで何度でも教える。参ったと泣く子などいない。なぜなら皆祭りが好きだからだ。地域の伝統が自然に受け継がれていく。

 町内を練り歩く子ども神輿(みこし)でこんな光景を目にした。さい銭係の子どもたちが一軒一軒訪問する。すると「みんなで分けるんだよ」と、その日のために集めた小銭を手渡すお年寄りがいた。平等の精神やお金の大切さを肌で感じるのも祭りの良さだ。人生の奥深さ、そして絆を教えてもらえる。また、祭りが終われば片付け、あいさつ回り、反省会と続く。

 祭りに参加していると、ふと思うことがある。もしこの商店街が毎日このにぎわいだったら不景気という言葉はなくなるだろうな、と。しかし、一部で祭りが面倒くさいという人たちがいることを知った。自分の仕事や用事があるから、大変だからと理由はさまざまだ。面倒、無理、できないと言っていて、果たして本当の幸せが待っているだろうか。出前をしてくれる飲食店は姿を消し、明かりの消えたにぎわいのない街に誰が住みたいと思うだろうか。

 今年の大間々祇園まつりには強い味方がやってきた。皆さんもご存じの「住みます芸人」である。有名なプロダクションに所属していて県の観光特使にもなっている大間々町在住の若手芸人コンビ「アンカンミンカン」。彼らは人を笑わせるために日夜努力をしている。人を泣かせたり怒らせたりするのは誰でもできるが、笑わせることは難しい。そんな彼らが大間々祇園まつりに参加した。商店街でお笑いライブをしたり、神馬とともに商店街を駆け抜けたり、大活躍だった。お客さんを喜ばせ、笑顔にする点は商いと全く同じだ。

 まちおこしで成功した地域では共通して「よそ者、若者、ばか者」が不可欠という。現在の青年部員はもちろん、これから青年部に入ろうとしている人たちも眠っている魂があるはずだ。落語家の故円楽師匠はNHKのラジオ番組で「人生に近道はない」と言っていた。100年、200年後、いや383年後に活躍する世代の人たちに「いい伝統をつくってくれたなあ」と言ってもらえる街づくりを継続できたらうれしい。さて次の祭りの準備をしなくては。






(上毛新聞 2012年8月18日掲載)