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日中緑化交流基金首席研究員  長島 成和 (前橋市下細井町)


【略歴】長野県生まれ。林野庁前橋営林局(現関東森林管理局)、日本森林技術協会を経て、興林に勤務。第2次奥利根地域学術調査隊員。林業技士。専門は森林土壌。


中国緑化報告(6)



◎植林後の育成管理重要



 わが国の日中民間緑化協力委員会事務局が、日中緑化交流基金のもとで中国の国土緑化に積極的に協力してきてから10年が経過した。

 国土緑化に協力するきっかけとなったのは、1998年の長江大水害である。6月ごろから降り始めた長雨は大洪水となり、長江流域で被災者2億4千万人(死者約2千人、家屋損壊1700万戸)にも達した。

 中国政府は、再び大災害が起こらないよう森林・林業政策の見直しを行い、「退耕還林」「防護林造成」「砂漠化防止林造成」などの実施に着手したのである。日本がこうした中国の緑化事業に協力することは、荒廃地の植生の回復や、水土流出防止等の一助になればとの強い思いのもとでのことである。

 この日中緑化交流基金の支援でこれまで植樹を行ったのは28省にわたり、約4万7千ヘクタールに達した。広大な中国国土からみればこれはわずかな面積かもしれない。しかし、緑化は着実に進行しているのである。さて、こうした緑化のための植林は、植えられたものが全てすくすくと育つ場所ばかりではなく、立地環境の良くない場所も多い。わが国では植林に際し、「たまたま枯れても同じ穴に三度は植えなさい」という言い伝えがある。中国にもこのような言い伝えがあるのかは分からないが、将来、立派な森林になることに大きな期待を抱きつつ、植林地の今後の育成のための管理が重要となろう。

 中国は、気候など立地環境が日本とは異なり、大陸性気候にあり、熱帯モンスーン気候、温暖冬季少雨気候、冷帯冬季少雨気候等、11の気候区に区分され、特に降水量が少ない箇所が多い。このため乾燥が厳しく、乾燥害の発生は激しい。保育・保護の作業の中でこうした場所では灌(かん)水が重要となる。日本では通常見られない保育手段である。

 造林地の管理で必要なことが他にもある。家畜による植栽木の食害対策である。日本でもシカやクマ等野生動物による食害はあるが、家畜の被害は少ない。中国はこのための防護柵の設置等防止対策を講ずることが必要である。さらに病虫害対策、施肥等々も。

 造林地は、成林に至るまで長い年月が必要である。日中緑化交流基金が手がけてきた造林地は、幸いにして樹勢良く生長しているようで、私たちが毎年「現地調査」に行っている中で、これまでに植栽された造林地の生育確認でも、その成果を見ることができた。このことは地元の関係者はもとより中国政府機関の指導による管理が継続されてきたことによるものと思う。

 最近、長江や黄河の水の色が少し清んできたという。気のせいではないと思う。われわれの緑化指導が今後も継続され、隣国中国の緑化に役立てば幸いである。







(上毛新聞 2012年9月12日掲載)