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視点 オピニオン21
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NPO法人「生きる塾」理事長  渡辺 謙一郎 (太田市新田早川町)


【略歴】太田市生まれ。樹徳高卒。小学生のころから障害のある人たちと過ごし、福祉への関心を高めた。防災士、日本メンタルヘルス協会認定カウンセラー、辺重社長。


みんなで復興



◎地域や心の壁いらない



 石巻市の子どもたちを太田に招き、のびのびしてもらう事業が終わりました。手伝ってくれる同志がいるからできる。本当にそう思いました。石巻の子どもたちから「後ろ向きだったけど、前を向いて歩こうという気持ちになった」などの感想をもらいました。私も子どもたちに「石巻でつらく寂しくなっても太田にたくさん仲間がいる。ひとりではない。そして太田だけでなく、世の中にもたくさんの仲間がいるからね」と伝えました。ほんの小さな事業でも人の気持ちを動かすことができるのです。太田に来てくれた子どもたちの将来がとても楽しみです。定期的に同窓会もしたいと考えています。

 がれきの撤去ボランティアをしている仲間にも同じことが言えます。解体する建物なのに中の掃除をしているボランティア。意味があるのかとも思えます。しかし違う。掃除をしている姿を見た被災者の方々が「私たちもやらなければいけない」と変わるのではないかと思います。そう考えるとボランティアってやっぱり奥が深いと思います。

 東北のことでお話をいただくことが多くなり、太田市防災訓練でも東北の物産展を出させていただきました。気仙沼と石巻の方々にわが家に前泊してもらい、物産を出してもらいました。これも好評に終わることができ、ホッとしています。ボランティア活動をしていてとても勉強になります。よく「自分のことは自分でやるから放っておいて」という人もいます。とても寂しいと思います。もっと多くの仲間と一緒になって日本の復興を行っていきたいものです。県の違いなんて関係ありません。みな同じ日本人、同じ人間なのだから。

 みんなで復興に向けて動けばよいし、壁なんていらないのです。地域の壁、人の心の壁、大嫌いです。もしこの災害時に道州制になっていたらどうだったでしょう。以前も書きましたが、がれきの処理について市にうかがい、国へもうかがい、そして県へ行ってくださいとたらい回しになりました。緊急時の対応スピードもおそらく国、県、市という三重構造で遅くなったのでしょう。道州制ですと東北は東北州になって災害時の対応は地域主権で行われます。そうすると州知事の采配一つで済み、速やかな対応ができたかもしれません。

 地域主権になれば独自で自分たちの地域運営をするようになります。人口の少ないところは収入が少なく不利なのではという意見を聞きます。物事は考え方です。逆に言うと、自分たちの地域を守ることができるのが地域主権なのです。ですから誰かが頑張れば良いではなく、自分が頑張らなければならないのです。国の区割りを変えることが人の心、精神を変えていくのです。日本再生へ向けたリーダーの登場を期待しています。







(上毛新聞 2012年9月13日掲載)