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◎やぶ環境多く分布拡大 6月下旬早朝、高崎市を流れる烏川右岸(城南大橋付近)のニセアカシア林。林床はササで覆われ、林縁にはクズ、アレチウリ等の蔓(つる)草が繁茂する。「ゲーイ ゲーイ ヒュイホー ヒーホー」。ウグイスやオオヨシキリのさえずりをかき消すように、林間からガビチョウの大きな鳴き声が聞こえてくる。ガビチョウはスズメ目チメドリ科に属するツグミ大の小鳥である。全身オレンジ色で、目の周囲を縁取る白色が印象的である。眉を白く描いたように見えることが、画眉鳥(がびちょう)という和名の由来になっている。 ガビチョウの県初記録は、1999年6月28日、藤岡市の庚申山。発見者は96年より毎日庚申山で野鳥の観察を続けている福田修三さん。福田さんから「庚申山の不明鳥」のさえずりを録音したテープと写真を送っていただいた。テープの声はクロツグミに似ていたが、写真には今まで野外で見たこともない小鳥が写っていた。愛用の鳥類図鑑にも未掲載の「不明鳥」は、後日、中国南部や東南アジア北部が原産のガビチョウと判明した。 ガビチョウは密生したやぶ内に生息するため、長距離飛翔はできない。雑食性で昆虫・果実・種子などを地上で採餌する。庚申山のガビチョウは発見直後、繁殖も確認された。やがて増加した個体は河原や里山林縁のやぶに沿って分布を拡大した。 ガビチョウの発見から6年後、深井宣男さんは野鳥の会会員からの情報や記録をもとにガビチョウ等の生息状況を分布図にまとめ、「野の鳥278号」(2006年)に発表した。ガビチョウは藤岡市・高崎市・安中市・下仁田町等で記録された。ガビチョウは現在も分布を広げている。 人間の活動によって、原産地以外に持ち込まれた生物を外来種という(帰化種・移入種とも呼ばれる)。外国との交流が始まって以来、愛玩、狩猟、食材、病害虫の駆除等、さまざまな理由や思惑で多種、大量の外国産生物が輸入されている。これらの一部が野外へ逃げ、あるいは意図的に放されて、地域に定着すると外来種になる。 ガビチョウが群馬県に出現したのも、大量のペットの籠抜け(もしくは放鳥)と思われる。セキセイインコなどが個人の籠から逃げ、短期間野生化することはある。しかし大部分は在来種との競争や捕食、厳しい冬を越せずに絶えてしまう。ガビチョウの幸運は、雑食性であること、気候が原産地に似ていたこと、そして競合する在来種の少ないやぶ環境が群馬に多く存在していたことである。 本種以外にもアライグマ、アカミミガメ、オオクチバス等々、人間活動の結果という因果を背負い、生態系への影響という問題を抱えながら、群馬の自然の中でくらす外来種が増えている。 (上毛新聞 2012年9月15日掲載) |