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視点 オピニオン21
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ゆいの家主宰  高石 知枝 (高崎市菊地町)


【略歴】愛知県生まれ。愛知教育大卒。元小・中学校教員。2001年に退職。「ゆいの家」を拠点に、料理教室などの「食」にまつわる啓発活動を行っている。


「食」は生きる根



◎全てをつなぎ幸せ導く



 教員退職後に始めた「ゆいの家」は、借りた一軒家に三々五々集まって、お茶を飲みながら、安心して何でも話せる居場所でした。悩みを抱える人も多く、ひと通り話し終えた後、一緒にお昼を食べる時の顔は別人で、みんなで持ち寄ってわいわい言って食べる食事は心を温かくしました。

 また、さまざまなジャンルのミニ講演は、この9月には300回となりましたが、おやつタイムや食事タイムを入れることで場がとても和み、講師の方と参加者がみんな一つに解け合う感じがして私は好きです。

 私が食を提供するようになったのは、家賃代を稼ぐのが始まりでした。しかし、いろいろな方との学びの中、食に対する意識がどんどん変わっていきました。

 中学校の教員をしていた時のある生徒は、家庭環境が複雑でまともに食事ができず、体重も増えていつもいらいらしていました。そんな彼が卒業後住み込みで働くようになり、3食食べられるようになったら、みるみる痩せて、3カ月後には「中学校時代はひどい生活をしていました」と自ら語り、とても落ち着いてきたのです。

 このようなことから、1回目のオピニオンに書いたように、今後は全ての人に関わる「食」を中心にしてやっていこうと思いました。

 つい先日参加した2泊3日の岡部賢二さんのプチ断食セミナーでは、岡部さんが「断食して腸がきれいになると心の宿便も取れますよ」と言っていました。そんなことがあるのかなあと思っていましたら、最後みんなで感想をシェアリングする時、参加された人たちが自分の心の中にしまっておいたつらい体験などをそれぞれ話され、中には涙を流しながら話される人もいて、本当に心の宿便も取れるのだと思いました。

 「食」は生きる根であり、全てをつなぐものです。そして「食」から人は幸せになれると真剣に思うようになりました。「食」に対してどう向き合うか、その向き合い方が今のその人を表すと思います。やけ食いという言葉があるように、いらいらしていると余計に食べたくなります。悩みがあれば食欲がわきません。もっともっとと欲でいっぱいの人は飽食をしたがります。気持ちが安定している時は粗食で十分満足します。

 人が幸せになる方法は人それぞれで、いろいろあると思いますが、私の伝える「自然(じねん)料理」は、食を通して多くの人に幸せになってほしいという思いを込めた料理です。幸せの種は、旬の野菜を使ったシンプルな料理の中にあります。そして人は見える関係の中に安心感を覚え、人だけでなく、全てのつながりの中に生かされています。そういったことに気づき、感謝できるようになれば幸せに生きていけると思います。







(上毛新聞 2012年10月1日掲載)