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視点 オピニオン21
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前橋朝倉小環境教育講師  鈴木 正知 (前橋市朝倉町)


【略歴】東京都町田市身。国内外の水族館や動物園で飼育員として勤務。現在、前橋朝倉小でビオトープを使った環境教育に携わる。前橋地域づくり連絡会委員長。


先人の知恵



◎地域文化育成に生かせ



 さまざまな特色ある自然環境の中、人々の生活や文化が交錯し、そこに住む一人一人が関わりを持ち、影響し合いながら暮らす。そこが「地域」。魅力ある自然や文化が織り成す多様な地域を私は心から愛し、誇りに思います。

 これまで「地域づくり」についていろいろとお話をしてきましたが、地域は環境負荷の少ない持続可能な暮らしによって、少しずつ形づくられていくものとの思いが根底にあります。そもそも地域を「つくる」という意識はあまりなく、そこに暮らす人たちが今必要と思うことを試し、それを望む人たちが集まり、活動が始まります。それが地域に適応できれば文化として定着するでしょう。

 そこには多くの生き物が生息する自然環境もあります。私たちは自然環境に敬意を払い、生活文化との調和を保ってきました。残念ながら、今そのバランスは崩れ「何かおかしい」と多くの方が感じています。前橋市立朝倉小学校の「学校ビオトープ」を使った環境教育授業や「まえばし地域づくり」の活動を通しても、より鮮明になっています。

 いま私たちが考え、行動すべきと思うことの一つは、新しいことを始めるだけではなく、先人の知恵をいまの時代に回帰させ、生活の中に取り込むことができるかどうかです。人生の先輩たちは「昔のこと」などと言わず、物質的に恵まれなかった時代を未来志向で生きた知恵を、存分に披露していただきたい。若い世代がその知恵を使い、持ち前の柔軟性で新しい形に変えて発展的な未来へ向かう創造性ある地域文化に育てます。

 地域においてそのアイデアや活動を柔軟に受け入れ、協調・協力・評価する。方向性やバランスを維持し活動できているかどうか、常にお互いが確認しながら全体を見渡す。このことは、地域づくりにおいて常に意識すべきことと言い聞かせています。

 子どもたちを取り巻く環境も地域でサポートする余地があると感じます。隣近所で世話を焼き合っていた時代に私は育ちました。そこまでの関係は求めないにしても、就学前の子どもを持つママやパパに地域が果たす役割は大きいと思います。同時にママやパパも地域を理解してほしい。子どもが大きくなるころ、世話になったご近所や地域への愛情が芽生えるはずです。

 地域と学校の関係も同様。子どもたちはもとより、先生方を地域が育てる感覚を持つことが重要です。地域の目を通すことで普段学校では見えない子どもたちの意外な部分が見えてきます。学校で見せる姿がすべてではありません。地域と学校は可能な限り情報をリアルタイムで共有し、有事の際もスムーズに対応できる信頼関係を構築することが大切です。未来あるすべての子どもたちが夢を持てる地域環境をつくる地域人の一人であり続けたい。







(上毛新聞 2012年10月7日掲載)