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視点 オピニオン21
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紙芝居屋めるへんしあたあ主宰  信沢 淳一 (安中市松井田町)


【略歴】大東文化大を卒業後、郵便局に34年間勤務。2009年に紙芝居屋めるへんしあたあを設立、紙芝居の出前公演を有料化した。演じ方や制作の指導もしている。


受け継がれる紙芝居



◎舞台や演じ方にも工夫



 紙芝居は進化しています。昭和の初め、街角で飴(あめ)を売るためのおまけでしたが、市民の娯楽として広く親しまれました。その後、テレビなどに太刀打ちできずに衰退してしまいましたが、今でも脈々と受け継がれています。

 出版社からは毎年何十冊もの新作紙芝居が発売され、近年は赤ちゃんや高齢者向け紙芝居も登場しています。高齢者紙芝居の監修などを手がける遠山昭雄さん推奨の「人生紙芝居」は、施設などで誕生日にその方の人生を演じることにより、脳が刺激を受けて活性化し症状が良くなるとのことです。外国では英語の「へこき姉さん」が演じられ、タイやインドネシア、カンボジアなどでも紙芝居が作られています。日本では教育紙芝居として販売され、保育園や幼稚園、小学校、図書館などに置かれています。

 楽譜付きの紙芝居もあります。演者も太鼓や拍子木だけでなく、録音した音楽を流したり、楽器を使うことで、表現の幅を広げました。

 手作り紙芝居は、市販の紙芝居と違い、紙の枚数に制約されず何十枚でも作ることができます。絵が動く仕掛けを付けたり、プラカードを使って盛り上げたり。右だけでなく、左や上へも紙を引き抜くことができます。

 サイズも多様です。新潟ひょうしぎの会が演じている畳2枚ほどの超大型紙芝居もあれば、こたつで演じると親近感のあるはがきサイズ紙芝居も販売されています。テレビでも漫才師がデッサン帳に絵を描き、めくりながら演じたり、みのもんたさんが記事解説を紙芝居で演じます。

 会話形式で絵を引きながら独特の口調で語られることで、誰もが紙芝居に引き込まれます。舞台に絵を入れるといっそう引き立ち、幕紙を使うと期待感が増します。何人もで演じる紙芝居ライブなどでは各自オリジナルの幕紙を使うなどの工夫をしています。舞台効果として蛍光灯を使うと、遠くからでもよく見えるようになります。

 今年の夏から、渋川市の学童クラブの先生の研修会で「子どもたちを引きつける紙芝居」と題して講座を開催したのをきっかけに、オリジナル幕紙を作ったり、舞台を手作りしたりと、盛り上がっています。

 紙芝居にはマニュアルがありません。それぞれが独自に演じています。演じる側の都合ではなく、観客の立場からどうしたら楽しめるか考察すると、演じ方が見えてくるはずです。私は舞台の後ろに暗幕を張り、観客がより紙芝居に集中できるようにしています。照明、衣装、舞台の高さ、作品の選び方と演じ方、これらがポイントでしょう。

 私は紙芝居を通して「元気・勇気・正義」を子どもたちに伝えたいと思っています。良いものだけが自然淘汰され残されます。紙芝居は日本の文化です。






(上毛新聞 2012年10月13日掲載)