,

視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
見城農園  見城 玲子 (渋川市渋川)


【略歴】伊勢崎女子高、文化服装学院卒。1976年に結婚後、渋川市へ。主婦の傍ら25年ほど前から夫の彰さんと趣味で果樹栽培を始め、規模を拡大してきた。


食の本場・関西



◎群馬産食材の進出を



 県内農家の方々の視線は東京に向けられていると思いますが、食の本場は関西です。当園では2010年から関西の飲食店さまとの取引が始まりましたが、関西の食に携わる人たちのつながりや絆の強さ、食に対する熱意、好奇心、研究熱心さには敬意を表するものがあります。輸送技術や保冷技術の進歩により、県内で生産された新鮮な農産物が収穫した翌日には関西に届きます。今年1月10日の「毛の国よ」欄に「嬬恋のキャベツが大阪を制した」との記事が掲載されていましたが、食に関しては「関西を制するものが日本を制す」と言えると思います。

 当園の関西進出は10年、キユーピーの3分クッキングに出演している小川聖子先生からの1本の電話から始まりました。「京都に若くて研究熱心な日本料理店和ごころ泉の店主、泉昌樹さんという人がいる。店で出す果物の助言を頼まれたので、コミスを送ってほしい」という内容でした。以後は驚くほどの速さで関西進出となりました。

 その年の10月下旬、泉さんにコミスを送ったところ、京都の二つ星日本料理店「桜田」、同じ京都のケーキ店「シェラメール」(的場浩司さんお薦めの店)、大阪の日本料理店「乃上」へも送ってほしいと言われました。お送りしたところすぐに各店との取引が始まり、京都3店、大阪1店との取引開始となりました。

 翌年10月、泉さんから今度は大阪の「焼き鳥・やまと」にコスミを送ってほしいとの依頼があり、やまとさんからは大阪の「レストランカハラ」(二つ星)と「鮨処多田」(いちげんさんお断りの店)、鳥取の日本料理店「懐食鈴乃希」を紹介され、各店との取引が始まりました。今年はレストランカラハさんから大阪の「柏屋」(三つ星日本料理店)、西宮市の「子孫」(同)を紹介されました。シェラメールさんは納品した加工用の桃やリンゴを京都の「未在」(同)に持参され、未在さんからコミス、桃、リンゴの納品依頼の電話がありました。数店から他の店も紹介すると言われていますが、果物の増産には年数がかかるので紹介は待ってもらっている状況です。

 関西の食に携わる人たちは良い物や珍しい物があると他店にも積極的に宣伝し、お互いが切磋琢磨(せっさたくま)して関西の食の地位を上げていくという風土があるようです。当園でも関西を制するという大きな目標ができました。

 ここで提言します。群馬県の知名度を上げるためにも、大阪に「ぐんまちゃん家」を開設してはいかがでしょうか。群馬の食材のいくつかが関西を制し、日本を制す。夢ではないと思います。





(上毛新聞 2012年10月20日掲載)