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視点 オピニオン21
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国立赤城青少年交流の家所長  桜井 義維英 (前橋市元総社町)


【略歴】川崎市出身。日体大卒。英国で冒険教育を学ぶ。1983年にNPO法人・国際自然大学校(本部・東京都)を設立。2011年4月から民間出身者として現職。


ガキ大将育てよう



◎活躍できる街づくりを



 先回の話題の中で、体験活動にもコストはかかるのですというお話を申し上げました。しかし、誰もがそのコストを負担できるわけではありません。ですから、やはり、このコストは行政が負担してくれるのが一番よいのだと思います。

 そのひとつの形が、私どもが働いている青少年教育施設、交流の家や自然の家といった施設なのだと思うのです。しかし残念ながら、これらの施設も行政の予算の不足から、どうも先細りの感が否めません。

 では、保護者の方々が負担するのでしょうか? できる家はいいですが、みなが平等に人間形成の基礎となる体験を『教育』として享受できるためには、やはり公でするべきだと思っています。その上で、より高度な体験をしたい人は有料でもいいでしょうが…。

 しかし、こんなふうにコストがかかるようになったのはいつからなのでしょうか。それはガキ大将がいなくなってきたからでしょう。青年団がなくなってきてからでしょう。雷おやじがいなくなってきてからでしょう。雷おやじというのはお節介な人なのです。

 では、ガキ大将や青年団や雷おやじが復活すればいいのではないでしょうか。それが難しいからコストをかけるのですね。私は思います。コストをかけて、教育が、大人社会がしなくてはいけないことは、このガキ大将を育てることではないでしょうか。

 そして、社会は、このガキ大将が生息できる環境を整えることなのではないでしょうか。それによって、いずれまた、コストをかけることなく人間形成の基礎となる体験を『遊び』として体験できるようになるのではないでしょうか。

 2カ所の傍線を比べてください。ガキ大将は『遊び』として、青少年教育施設は『教育』としてなのです。子どもの時の体験は、この遊びと教育のどちらともとらえることができるものなのです。

 ですから、教育ではちょっと扱いづらいのかもしれませんね。皆さん、ぜひ私たちにガキ大将を育てる活動を皆さんの地域でさせてください。

 ただし、ガキ大将が育っても、ガキ大将が活躍する裏山や原っぱがないと、子どもの時の体験は実現しません。ですから皆さん、ガキ大将を育てるとともに、ガキ大将が活躍できる街づくりもしてください。

 大人の都合で町づくりをするのではなく、子どもを育てることを考えた町づくりをしようではありませんか。子どもたちが、ガキ大将にくっついて走り回れる街づくりをしましょう。





(上毛新聞 2012年10月26日掲載)