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視点 オピニオン21 |
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◎プロセスであり続ける 最近、友人が絵を描いて見せてくれた。それは(本人いわく)キツネの絵で、小学校の国語の教科書に載っていた「ごんぎつね」をモデルにしたキャラクターだった。名前はゴン。肝心のストーリーはすっかり忘れていたけれど、僕らはその絵のことは鮮明に覚えていた。こんなふうにいつまでも覚えている十数年も昔の、他愛もない記憶の一つや二つ、みなさんにもあることだろう。 僕が子どもたちとかなづちで絵を描いたり、木の皮をむいたりして遊んでいる前橋の清心幼稚園に、雪が降った。まだ10月だけど、幼稚園の中が真っ白になった。子どもたちは「雪幼稚園になっちゃう!」と言いながら大喜びしていた。その雪の正体は、発泡スチロール。 はじめは、ちぎった発泡スチロールのかけらをお寿 す し司に見立てたり、楽器に見立てたりという様子だったらしいのだが、ある子どもが「雪みたい!」と言ったことで、一気に雪遊びになり、広がったらしい。気がつけば、競い合うように発泡スチロールのかけらをこすり合わせ、階段の吹き抜けを使って上から雪を落としていた。 幼稚園でアートを通して子どもたちと関わっていると、その子たちの20年後くらいを想像することがある。この子たちが今の僕と同じくらいの年になった時、今日という日を幼稚園で過ごしたことをどれだけ覚えていてくれるのだろうか? とついつい考えてしまうのである。 僕が制作手法としているワークショップで大事にしているのは、参加者とイメージを共有するフェーズである。特に、共有されるイメージが生まれる瞬間がドラスティックなものになると、印象深いワークショップになると思う。 今回、あまり深く考えずに、幼稚園へ発泡スチロールを持ち込んでしまった。雪が降り積もった後は、言うまでもなく大変な作業が待っていたが、子どもたちも掃除をたくさんしてくれた。掃除をしながらも、きれいな粒を探して拾い集めて持って帰ったり、ガムテープで雪のかけらをくっつけているうちに、洋服がガムテープですっかり覆われて新しい服ができたり、絶え間なく想像が連鎖していく。 発泡スチロールは体に良い素材ではないので、幼稚園にはふさわしくない素材だったかもしれない。しかし、そういった考え方だけでは、想像力を奪うことにもなってしまう。素材の危険性や創造性を熟慮した上で、〈思いがけない〉出来事を作っていくことはできないか。「こうやるとこうなります」といって結果があらかじめ設定されていることの実行ではなく、「こうやるとどうなるか分からないのでやってみませんか?」といって、失敗や更新を含んだプロセスであり続けることと、〈思いがけない〉ことへの寛容さを育てるべきだ。 (上毛新聞 2012年11月1日掲載) |