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読み聞かせボランティア  片亀 歳晴 (玉村町樋越)


【【略歴】太田高卒。伊勢崎市職員を経てアート記録設立。解散後、ボランティアに専念。小さな親切運動本部特任推進委員、紙芝居文化推進協議会会員、玉村町選管委員。


現代ボランティア考(7)



◎「人を結ぶ紙芝居」実感



 昨年12月、友人のNさんからフィリピンへの旅行に誘われ同行してきました。その目的の一つは、Nさんが同国の特別支援児童の教育実態を視察するにあたり、ボランティアでの紙芝居公演を依頼されたからです。

 幸いにも、マニラ及びセブ市の4小学校等で紙芝居を演じる機会を得ることができました。その折、私は日本では用いない身ぶり、手ぶりを取り入れてみました。それというのも、以前、外国人が演じる紙芝居に接したとき、大げさとも思える彼らのアクションを目の当たりにし、大変印象的であったため、「郷に入れば郷に従い」で、それを実践してみたわけです。

 一番うれしかったことは私の拙い英読が現地の子どもたちにも通じたということでした。このことは、とりもなおさず紙芝居が人と人とを結びつける有益かつ効果的なツールであることを裏付けた証しでもありましょう。

 紹介した紙芝居は、急きょ製作したフィリピンに伝わる昔話の「ワニの贈り物」で、その物語は、ワニの子どもを上手な子守歌で寝かしつけた優しいおばあさんにはワニの親から魚が入った小さな籠が贈られる。一方、眠っているワニの子どもを無理やり起こし、下手な子守唄でさらに泣かせた意地悪なおばあさんは、大きな籠をもらうが、その中には蛇が入っていたというものです。

 この作品は、今年の「箕面手づくり紙芝居コンクール」で最優秀賞を受賞したものです。5回目の応募で、ようやく受賞の栄に浴したという体験をもとに、何事もあきらめず挑戦し続けることの大切さを子どもたちにも、伝えていきたいと思っています。

 さて、私がこの旅行を二つ返事で受け入れた理由は、もう一つありました。それは私より二回り上の兄が太平洋戦争末期に、フィリピン・カガヤン州で戦死しています。そこはマニラからはるか北に位置しますが、同じルソン島を訪れる機会に、亡き兄への鎮魂の意を表したいという気持ちがあったからです。

 兄は、お国のためにと、自信と誇りに満ちた表情で勇躍戦地に赴いたそうですが、それは戦時という局面、また長兄という立場ゆえに示した態度ではなかっただろうか、私にはそう思えてなりません。

 家族を残し、想像を絶する過酷な状況下で、あたら若い命を散らした兄は、どんなに苦しく、つらい思いをしたことでしょう。兄が自ら望んだ兵役であったか否かは別として、私は1回目の寄稿で、ボランティアの語源は義勇兵(志願兵)である旨、記しましたが、その意味の「ボランティア」が必要とされない社会づくりを、そして戦争という蛮行が世界中からなくなる時代の到来をひたすら祈りつつ、読み聞かせボランティアを通して「平和」「親切」を訴えていきたいと思っています。






(上毛新聞 2012年11月2日掲載)