,

視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
県民健康科学大准教授  杉野 雅人 (伊勢崎市連取町)


【略歴】愛知県出身。2000年博士(工学)取得。診療放射線技師、第一種放射線取扱主任者、医学物理士。環境放射線の研究を20年続け、10自治体の放射線測定を監修。


クラシックギター



◎貴重な時間 有効に使う



 早いものだ。「視点」欄の執筆を始めてから約1年がたった。これまで放射線の話題を取り上げてきたが、今回は私の趣味について書きたいと思う。

 月並みなせりふだが、年を経るごとに時間が早く流れるように感じる。聞いた話によると、年齢を重ねるごとに過去の事象が記憶として残らなくなるのが理由の一つだという。また、仕事の合間や昼休みに考え事をする機会が増えてきた。こういう時間を作ってしまうことが脳にストレスをかけるため記憶力の低下を招くとも読んだことがある。

 実際にはどうなのか分からないが、ほとんどのことが悩んでいるだけでは何も解決しないのだから時間の無駄だ。記憶力を落とさないためにも、貴重な時間をつまらない悩みでつぶさないためにも、何かをやった方が良い。何をやるかは人それぞれ自由だが、趣味を持っていると話は簡単である。

 小学6年生のころの話になるが、姉の部屋に入ると、1本のクラシックギターがタンスの片隅に放置されていた。中学校の音楽の授業でたった3回しか使わないというのに、親に買ってもらったものだ。放置されているギターを見るたび、なぜか寂しくなり、弾いてあげたくなった。

 姉が部屋にいない時、ギターを引っ張り出してはジャラン、ジャラン…と、ただ単純に指でかき鳴らしたものだが、いつからかちゃんと弾けるようになりたいと思い始め、習いに行くこととなった。しかし、ギター教室の先生は予想以上に厳しかった。練習不足だと何度もしかられ、先生の前で泣きながら弾いたことがたびたびあったが、ギターの練習に明け暮れた中学生時代であった。

 中学を卒業してから群馬に来るまでの約10年間、ギターを弾くことはほとんどなかったが、昼休みは欠かさずトランペットの練習に打ち込む教員と出会って気持ちが変わった。昼休みは一服しながらネットを眺める、というようなダラダラした時間を過ごしていた自分がむなしくなってくるのを感じたからだ。

 あれから約15年間、ギターを趣味とし、本学のクラシックギターサークルの顧問をしている。ほぼ毎年、新入生がサークルに入ってきており、最近では、私より学生たちが率先して老人ホームなどの福祉施設や病院にあるデイサービス等へボランティア演奏に行くことが多い。とても評判が良いのでうれしいし、顧問としてサークル員らを誇りに思う。

 趣味を持っていない方、探している方、まずはクラシックギターの音色を聞いてみませんか。気持ちに何か変化が現れるかもしれませんよ。






(上毛新聞 2012年11月4日掲載)