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視点 オピニオン21
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群馬製粉社長  山口 慶一 (渋川市渋川)


【【略歴】日本大学大学院修了。群馬製粉3代目社長として洋菓子用米粉「リ・ファリーヌ」や国産米100%の「J麵」を開発。食糧、気象などに関する著書多数。



桜井先生との出会い



◎天文に興味、暦を作る



 今年は5月の金環日食や金星が太陽を横切る現象、プラネタリウムの開業ラッシュなど、宇宙への関心が非常に高まりを見せています。それは長引く不況や閉塞感が続く中で、多くの人々が現実社会に希望を見いだせなくなっているからかもしれません。

 しかし、そんな状況を打破するのは天文観測から作られた暦かもしれない。今後あらためて「暦」が話題になりそうなのです。現在と同じような社会状況が江戸時代にもありました。冲方丁氏が書いた『天地明察』の主人公、渋川春海(安井算哲)が天文観測を行い、新しい暦を作成したことで時代の閉塞感を打破したのです。これは今映画化され大変話題になっています。

 私は渋川市で生まれ育ち、満天の星を眺めたり、宇宙のことが大変好きな想像性豊かな少年でした。そのころから漠然と、世の中で起こる物事、事象の背景には何らかの要因が働いているのではないかと感じていました。天文に興味を持ち、その中に謎を解く鍵があると直感で感じたのです。中学生のころ、本屋で宇宙物理学者の桜井邦朋先生の『太陽からの風と波』(ブルーバックス)が目にとまり、当時神奈川大学学長だった桜井先生へ手紙で質問する日々が続きました。

 先生はお忙しいにもかかわらず、一つ一つ的確に私の質問に答えてくれました。そのやり取りは30年にも及びました。普通なら天文に興味を持つ人は星や彗星に夢中になるのでしょうが、私は世の中で起こった出来事と太陽や月の運行が密接に関連しているのではないかと疑問に思い、その関連性を解明していったのです。

 現在、世界で使われている太陽暦、グレゴリオ暦は地球から見た太陽の動き、太陰暦は地球から見た月のサイクルを基準に作られました。また「太陰太陽暦」は月と太陽の運行を両方取り入れた暦です。つまり、世界中で使われてきた暦は全て地球の動きを中心にして考え作られた暦です。私は独自の視点を持ち、太陽の動きを観測しました。太陽は約28日周期で自転しており、7日ごとに磁場が反転しています。そして地球に一番近い月の潮汐を取り入れて研究を行い、1カ月が28日、1年は13カ月の暦を作成しました。

 明治維新まで日本では渋川春海が月の動きを中心に作成した「大和暦」が使用されていました。しかし、グレゴリオ暦を導入し、機械的な工業商業中心の経済優先の生き方を選択し、私たちは生物、人間本来の自然な生き方を放棄してしまったのです。私は独自の視点から太陽を中心とした全く新しい暦『太陽と月の暦』を完成させました。『天地明察』の主人公は渋川春海、私が住む渋川という地名には不思議な縁を感じます。






(上毛新聞 2012年11月5日掲載)