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視点 オピニオン21
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医師・作家  川渕 圭一 (高崎市竜見町)


【略歴】前橋市生まれ。パチプロ、会社員、引きこもりを経て、37歳で医者に。43歳で小説『研修医純情物語』を出版。現在、内科勤務の傍ら、執筆や講演活動を行う


新たな伝統



◎全公立高校の共学化を



 あまり過去を悔やむタイプじゃないが、高校時代だけはもう一度やり直せたらと、今でも本気で思っている。

 「男女別学でよかった」という人もいるけれど、僕は男子校が嫌でたまらなかった。

 第一に、不自然きわまりない。この世の中は男と女で成り立っており、男女を強制的に分けているのは、トイレと刑務所くらいのもんだろう。

 第二に、学校に行っても何の張り合いもない。右も左も真っ黒な詰め襟姿の男子のみで、女子は一人もいないのだから。僕は3年間、鬱うつうつ々とした気分で前高に通った。

 異性がいると勉強に集中できない、なんて言う人がいるが、それはちょっと近視眼的な見方だろう。彼女(彼)ができたからといって成績が落ちるようでは、将来まともな社会人にはなれない。むしろ異性にいいところを見せたくて、頑張る生徒の方が多いんじゃないかな。僕自身の体験を語れば、エエカッコする必要がないから高2までまったく勉強しなかった。2浪目で彼女ができてがぜん張り切り、東大に合格できた。

 人間なんてそんなもんだ。異性との交際が勉強の妨げになると思う生徒は、付き合わなければいい。高校生にもなればそこらへんは各自、判断できるでしょう。

 むろん男子校・女子校はあっていいし、その方が向いている人もいるだろう。問題は、群馬の名門公立高校が、未いまだに男女別学であることだ。公立の進学校を志望する生徒は、群馬にいる限り、別学に行かざるをえないのだ。

 僕も泣く泣く前高に進学したけれど、公立高校が男女に分かれているのは、ある意味差別であって、大人の都合で未来ある若者に選択の余地を残さないのは、ほとんど罪と言ってもよい。

 試しに中学生にアンケートをとってみたらいい。前高や高女を目指しているけれど、本当は共学高校に行きたいと思っている生徒は、思いのほかたくさんいるはずだ。

 これからの日本、女性はますます社会に出て活躍するだろうし、男性もより積極的に家事や育児に携わるだろう。もはや男女の役割分担は、昔のように明確ではない。そんな時代に、しかも最も多感で、人生の土台が築かれる大切な時期に、男子と女子を分けてしまってよいものか?

 別学のメリットとは、一体なんだろう―いくら考えても、その問いに対する本質的な答えは出てこないのだが、今でも男子校・女子校の伝統を守るために「共学反対!」と、声高に主張している人たちがいるらしい。彼らが本当に若者の将来を考えているとは、僕には思えない。

 伝統とは、一部の大人がそれにすがって生きるために存在するものではない。新たな伝統を作るため、若者に無限の可能性を与え、活躍できる場を提供することこそ、大人たちの役割ではないか。







(上毛新聞 2012年11月21日掲載)