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児童自立援助ホーム「ぐんま風の家」ホーム長  佐藤 昌明 (前橋市三河町)


【略歴】青年会議所の活動をきっかけに、NPO法人「青少年の自立を支える群馬の会」の立ち上げに関わった。花店社長を退き、2009年5月から現職。


行き場のない子ども



◎18歳まで何とか援助を



 多くの子どもは、両親の愛情と家族の応援を受け、安心した生活の中で、高校など上級の学校へ進学する。そして、年齢とともにいろいろな体験を通して社会人として自立していく。

 しかし一方では、核家族化などにより、孤立した家庭で誰からも援護を受けられず、子育てにストレスを抱え込んだ親からの虐待(肉体的・精神的)や親の欲望のはけ口として性的虐待を受ける子も多数存在している。そんな親から保護しなければならない子どもたち、そして虐待以外でも、何らかの理由で家族と離れて暮らさざるを得ない子どもたちが、児童養護施設・乳児院・里親・ファミリーホームなどの家庭に代わる環境の中で、現在4万人弱が暮らしている。そこで中学を卒業した子のほとんどは高校などへ進学して、同じ施設の中で卒業まで生活を続けていく。

 けれども、さまざまな理由で高校などに行けない子や進学はしたが退学・中退してしまった子は、すぐに進学・就職ができないまま生活を送ることになる。同じ環境の中に学生とそうでない子が一緒に生活するのは難しい面があり、家庭に復帰して就労する子もいるが、ほとんどの子は住み込み就職やまだ改善が必要である家庭、あるいは祖父母らの親戚宅で生活することになる(高校などを卒業し18歳で社会人として出て行く子も同じ)。

 しかし、それすらもできない子は、どこに行けばいいのだろうか。さらに何らかの理由により、就職先や家庭にいられなくなってしまったら…。また、少年院や鑑別所などの更生施設でも身元引受人のいない子はどこに行けばいいのだろうか。

 女子児童の場合は、より深刻である。携帯電話を持ちたい、おしゃれもしたい。中学卒で、保護者も何の資格も持たない女の子が現在の厳しい社会環境の中で生きていくために、手っ取り早く収入を得られる援助交際や風俗・性風俗へと流れていくのは半ば当然のことだと言える。

 児童自立支援施設「ぐんま学園」の職場体験を長年にわたり引き受けてきた前橋青年会議所の卒業者を中心とした「ぐんま学園協力会」は、中学を卒業して社会に出ていく子どもたちと接する中で、少なくとも18歳までは何とか援助できないものかと考えていた。そして10年前に「児童自立援助ホーム」の存在を知り、栃木・埼玉・東京のホームを視察し、何度も会議を重ねながら「NPO青少年の自立を支える群馬の会」を設立し、8年前に群馬で唯一の児童自立援助ホーム「ぐんま風の家」の運営をスタートした。

 次回は現在までの「ぐんま風の家」と子どもたちについて、お伝えしようと思う。






(上毛新聞 2012年11月25日掲載)