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◎地域の誇りを次世代へ 旧倉渕村(現高崎市倉渕町)は2001年、第16回国民文化祭に参画し「道祖神フェスティバル―道祖神の里をたずねていにしえの心にふれよう」と題したイベントを開催した。道祖神シンポジウム、どんどん焼き体験、全国道祖神パネル展、道祖神の里めぐり、参加者との交流会と、延べ3200人が秋晴れの2日間を満喫した。 倉渕地域には77カ所、114体の道祖神が点在している。この身近なお宝にスポットをあて、行われたのである。この文化祭が契機となって現在でも「道祖神の里めぐり」が開催されている。 道祖神を祭る地域を見ると、東日本に多く分布し、群馬県は長野県に次いで第2位となっている。 特に倉渕地域は、寛永年間の県内最古のものから倉渕地域特有の「元禄雛びな」、数少ない単体道祖神、さらに明治期・大正期まで幅広い時代分布を占め、造形的にも、その時代の特色を表した優れたものが多い。倉渕が「道祖神の宝庫」とも言われるゆえんである。 倉渕では昭和から平成にかけて、心なき者による道祖神盗難があった。当時、地域の人々は路傍の石仏があることを知っていても、道祖神の存在に関心が薄く、保護・管理面にも問題があったといえよう。 当時の村当局は、その予防措置を行い、現地の再調査などの安全点検を実施した。しかし、地域ぐるみで道祖神を保護し、継承していく機運となったのは国民文化祭であった。この文化祭をきっかけにして毎年11月に「道祖神の里めぐり」が行われ、県内各地から多くの参加者が訪れている。 「会場での郷土の物産を食材としたおもてなしはおいしく、心からの接待に大満足でした。道祖神めぐりでは野良仕事の田畑から、家の庭から、『ご苦労さん、いい日ですね。お茶でも飲んでいってください』と声がかかりました。次代を担う中学生の参加と真剣な案内は大変よかった」 「道祖神の里めぐり」に参加した人々は石仏に心を癒やされ、地元の温かいもてなしの心に感激した様子だった。 中学生の参加者は希望であるが、ほとんど全員が案内役に当たり、学校も積極的に協力していることは特記したい事である。 この文化祭で、身近な石仏を通して情報発信と地域づくりができ、一つの地域の誇りができたことは大きな成果であった。 路傍に立つ素朴な道祖神などの民俗文化財は、ふるさとの祖先が残した信仰の遺産であり、私たちはこれらを次世代へ大切に引き継いでいきたいものである。 (上毛新聞 2012年11月27日掲載) |