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視点 オピニオン21
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NPO法人「群馬わんにゃんネットワーク」理事長  飯田 有紀子 (藤岡市篠塚)


【略歴】熊本県出身。西南女学院短大卒。全日空の客室乗務員として約10年勤務。結婚後、夫の実家がある藤岡市に転居。県動物愛護推進員。2008年から現職。


犬や猫の命



◎飼い主は責任を持って



 あなたにとって、犬や猫はどんな存在でしょうか? 大切な家族の一員、癒やしを与えてくれるかけがえのない存在など、こよなく犬や猫を愛する人がいる半面、排せつ物をまき散らす迷惑な存在、うるさくほえて近所迷惑な存在という方もいるのではないでしょうか。

 空前のペットブームと言われる中、2010年度に全国で殺処分された犬や猫は20万匹を超えています。群馬県でも、11年度には犬猫合わせて1523匹が殺処分されている現実があります。NPO法人群馬わんにゃんネットワークは、群馬県内で殺処分される犬や猫を1匹でも減らすための活動を行っています。

 群馬県及び中核市である前橋市・高崎市の犬猫譲渡事業の登録団体である私たちは、収容された犬猫の譲渡を行っていますが、各保健所の収容部屋に一歩足を踏み入れると、飼い主に見放され、翻弄される犬や猫の実態がそこにあります。必死で救いを求めに来る子、全てを諦めたかのように空を見つめる子、おびえて隅で固まっている子。全てを救う力は、今の私たちにはなく、毎回自分たちの無力さに打ちひしがれながら、せめて救える子をとメンバー一同で頑張っています。

 県内で収容される犬のほとんどが首輪をしている飼い犬です。昔のような野犬や野良犬は一部の地域を除いて格段に減りました。これは、飼い主さんが首輪に鑑札を付ける、名札を付けることで殺処分を防げるのではないでしょうか。猫に関しては、殺処分される9割が生まれて間もない子猫という現実があります。避妊去勢を進めることが何より不可欠であると感じます。

 譲渡事業のほかに大切なのが、現在犬や猫を飼っている人、これから飼おうと考えている人への啓発事業だと考えます。単にかわいいから、ブームになっている種類だからと飼ってしまうのは、とても危ないことです。飼い主一人一人が、一度手元に迎えた命に責任を持ち、最後まで愛情を持って暮らすことができれば、殺処分される罪のない命は減るはずです。これから犬や猫と暮らそうと考えている方へのアドバイスや、飼った後でぶつかるトラブルへのアドバイスなどを行うことによって、殺処分という最悪の結果を防ぐことができればと考えます。

 世の中には犬や猫が好きな人ばかりではなく、あまり好きではない方もいらっしゃると思います。そんな方々にも受け入れていただけるような活動を常に心掛け、人と動物が共生できる街づくりを目指していきたいと思っています。保健所に収容される犬や猫が減り、里親探しの必要がない群馬県が私たちの目標です。






(上毛新聞 2012年12月5日掲載)