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視点 オピニオン21
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NPO法人ザスパスポーツクラブ理事長  倉尾 正典 (前橋市石関町)


【略歴】宮崎県生まれ。2003年から2年間、ザスパ草津トップチームコーチを務め、05年からアカデミー(下部組織)コーチ。U―18監督と兼任で12年から現職。


スポーツのある日常



◎環境整え生活に活気を



 「スポーツをしなさい」とか「身体を動かしなさい」と言われたら、あなたはどうしますか?

 子どもたちも大人たちもすぐに行動に移すことは難しいだろう。しかし、目の前に大きな芝生のグラウンドがあれば、楽しそうにスポーツをする人たちが大勢いれば、それを見ている歓喜の輪があれば…それらを目の当たりにしたらどうだろうか。

 スポーツの持つ力を多くの人に届けたい、スポーツの素晴らしさを多くの地域に広めたい―そんな思いが、ザスパスポーツクラブ設立の基盤となっている。

 ザスパスポーツクラブは、総合型地域スポーツクラブを目指して今年2月に設立された。現在、中心となる活動はJリーグのザスパ草津から事業委託されているアカデミー(育成組織)の運営である。そのほか、ゴルフ教室や学童保育、食育など、地域の子どもたちに対する育成事業が徐々に増えつつある。今後はさらに、サッカー以外にも多岐にわたるスポーツ活動を広げていきたい。

 昨年はなでしこジャパンの活躍、今年はロンドン五輪があり、スポーツによって市民が活気づいたのは誰もが疑いを持たない事実である。そんな感動と興奮が身近に存在すれば、われわれの日常も活気づくことが期待できる。

 しかし、現状はどうだろう。身近に誰でも気軽に参加できるスポーツクラブや施設はあるだろうか。

 欧州では各地域に総合型地域スポーツクラブがあり、市民が気軽にスポーツ活動へ参加できる環境が整備されている。スポーツが市民の生活や文化の中に醸成されている。日本でも徐々に総合型地域スポーツクラブが認知されてきているが、まだまだスポーツが市民の日常に根づいているとは言えない状況である。

 そこで、ザスパスポーツクラブは群馬県を中心とした近隣地域に、スポーツ文化を醸成するべく活動を広げていきたいと考えている。

 この20年でサッカーやバスケットボールなど、スポーツのプロ化の流れが進んだ。2002年のサッカーW杯、最近では女子U―20W杯など、日本でも世界大会が開催されている。しかし、期間中の盛り上がりは目を見張るものがあるものの、それが継続されることは難しい。理由は、いったん大会が終了すると目に触れる機会がなくなってしまうからだろう。だから、日常にスポーツがあり、それが当然の欧州諸国を追い越すまでの発展が見られないのではないか。

 スポーツのある日常生活を提供したい。人々の生活を活気づけるための環境整備こそがザスパスポーツクラブに課された社会的役割ではないだろうか。






(上毛新聞 2012年12月6日掲載)