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視点 オピニオン21
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デザイナー  岡田 達郎 (前橋市富士見町)


【略歴】前橋市生まれ。多摩美術大彫刻学科卒。同市内のデザイン事務所に勤務。前橋自転車通勤部部長。市民有志と共に自転車による前橋の街の活性化に取り組む。


自転車ブーム



◎専用レーン整備進めて



 アニメで空飛ぶクルマに夢を見ていた昭和時代を経て、現実の21世紀のふたを開けたら、まさかの空前の自転車ブーム。これは、県内においても例外ではなく、ここ数年で多くのヒルクライムレースが県内各所を舞台に開催されてきました。どのレースを見ても定員に軽く達する状況にあり、近年のエコブームからくる自転車人気の現状が、こういったところからもうかがえます。さらに、来年は高崎―榛名を舞台に超大規模なヒルクライム大会が行われます。山岳エリアの豊富な群馬県は、今や全国的に見ても、ヒルクライム王国として全国にPRしてもおかしくないと思います。

 私は「前橋自転車通勤部」という有志からなる部活動を2年前に立ち上げ、前橋市内を中心にラジオ放送、ZINEの発行といった活動を継続的に行っています。活動の目的は、自転車の街としての前橋市のイメージを外部に発信するためのお手伝いです。そもそも、前橋市が自転車利用に特化したまちづくりを行っているということを知っている人は、県内にどれだけいるでしょうか。例えば、誰かが前橋市へ観光に来たときのことを想像してみましょう。電車を乗り継ぎ、目的地である前橋駅のプラットホームに降りた瞬間、「ああ、前橋って街は自転車に力を入れている都市なんだ」と思う人は少ないと思います。

 前橋市は2008年に定例記者会見で「日本一の自転車王国まえばし」の実現を打ち出していますが、きちんとした継続的なPR活動がなされていない現状を考えると、実現への道程はかなり厳しいものと思われます。そういった広報・PRの問題を、私は市民レベルでできることから解決しようと考え、コミュニティーラジオや紙媒体を利用して、ごくごく少数の仲間たちと共に、自転車と前橋の関係について外部に発信することを始めました。

 冒頭にも書きましたが、昨今の自転車ブームで、中高年をはじめとした自転車利用者の数はうなぎ上りです。その利用者の急速な増加に対し、ハード(道路)のほうは、一向に整備が進められず、警視庁からの「自転車は原則として車道走行」の通達のみで片付けられてしまった印象があります。増え続ける自転車人口に対し、自転車専用レーンの配置といった道路の環境整備が進まなければ、自転車ブームは定着せずに終わってしまうことも考えられます。

 正直なところ、前橋市は日本一の自 •転 •車 •王国ではなく、まぎれもなく日本一の自 •動 •車 •王国というのが現状です。本当に日本一の自転車王国を目指すのであれば、自転車利用者の視点に立ち、専用レーンの設置といった目に見える環境整備が最優先課題ではないかと私は考えます。






(上毛新聞 2012年12月8日掲載)