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東京都一般任期付職員(いわき市派遣)  塚原 信孝 (福島県いわき市)


【略歴】東京都立大大学院修了。前橋工科大事務局長で前橋市定年退職、2012年9月から現職。同大地域連携推進センター協力研究員。1級建築士。危機管理士2級。


進まない復興事業(1)



◎大胆な組織改革が必要



 復興事業のために相当数の技術者が不足する中、東京都は、土木・建築技術者を全国から募集し、即戦力の47人(平均年齢53歳)を採用、10の被災市町村に派遣しました。

 私は9月中旬、5人の仲間と共にいわき市に派遣され、土木部営繕課に配属されました。主な使命は、狭く冬季は床が結露しカビが発生する劣悪な居住環境の仮設住宅で暮らす被災市民のために、より広く安定した家族生活を営め、コミュニティーに配慮された住環境を提供できる災害公営住宅約1200戸を早期に建設することです。

 復興事業の現場に入ってみると、復興事業がなぜ進まないのか、その理由がよくわかりました。理由は「復興事業の事業量が担い手である設計・コンサルタント・建設等の地元業界の能力を超えている」「資材・労働力が不足がちで、復興事業の工事費の高騰だけでなく、工事自身ができない事態となっている」「事業の対象となる被災者側の主体の確立が進まない」などに整理できますが、今回はまず、「復興事業量・質が事業主体である被災自治体の能力をはるかに超えている」ことについて述べます。

 大震災は、復旧復興力に不可欠な自治体の組織・職員に深刻な打撃を与えました。大槌町のように、町長以下相当数の職員が亡くなり、現在半数を他自治体等からの派遣職員に依存している自治体もあります。

 中核市であるいわき市は震災前、人員削減などの行政改革を進めてきたこともあり、未曽有の災害からの復興事業を効果的にスピーディーにこなしていくだけの職員力が絶対的に不足しています。私たちはそれを補う応援要員です。現時点で45人が他自治体から応援に来ています。群馬は、前橋市から4人が派遣されています。しかし、それでも復興事業規模に対して絶対的にマンパワーが足りません。今後さらなる全国からの応援が必要であることはもちろんのことです。

 また、既に検討されていると思いますが、復興事業のような時限的大事業を完了させるためには、復興事業本部的なプロジェクト型組織の下にワンストップで事業推進を図れる組織が適しています。

 いまだ組織機構の見直しを抜本的に行える状態ではない被災自治体も多くあると思います。しかし、震災後1年9カ月がたち、復興事業に本格的に取り組める環境が整いつつあります。この段階において、大胆に組織改革を実施し、震災以来苦労してきた自治体職員と、他自治体からの派遣職員の力を最大活用できる体制を構築し、復興事業推進上にある他のさまざまな隘路(あいろ)を打開するさらなる原動力としていくことが今こそ必要と思います。






(上毛新聞 2012年12月9日掲載)