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視点 オピニオン21
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ミツバ工機部樹脂技術センター主幹研究員  梅沢 隆男 (前橋市粕川町)


【【略歴】山形県出身。群馬大工学部卒。ミツバ入社後、ものづくりに携わり、現代の名工、ものづくり日本大賞、黄綬褒章を受章。現在、ものづくり技術開発推進。


ものづくり



◎次世代の成長が楽しみ



 ものづくり現場の海外生産移行が加速する中、その基盤となる金型、設備までも海外での製作・調達が加速している。日本を支えてきたものづくりの次の場が技術・技能者の海外流出で終わるとは思えない。そうなると次の世代、さらにその次を担う人たちが生まれ育つ環境が変わってしまう。

 皆さんは「金型」をご存じだろうか。いろいろな部品は金型を通して加工され、形や精度が安定して作られる。工作機械もNC化され、今や日本の中で標準化された金型、設備で、CADデータや標準部品等があれば、ある程度の形になる。コンピューター化・標準化したことで、世界に広がるスピードは、従来と比較してより加速している。そういう意味では、世界に広く貢献しているといえる。

 しかし、それによって海外の追従も想像以上に加速している。擦り合わせ技術が必要とされ、ノウハウ的なところは多いが、さらにグローバル化が進み海外で作る機会が拡大することで、経験もますます積んでいくものと思う。

 日本のものづくりを世界一にするため、戦後復興させた親たち、その後、継続して進化・成長させた世代。そして今、その次の世代が主力になっていくが、ものづくりの基軸になる人の成長は、経験と知識の両面から時間が必要とされる。

 孫の保育園の運動会に参加する機会があった。

 ものづくりの視点から見てみると、親子競技、祖父母との玉入れ競技などに手作りのものを使用していることに気づく。私の妻が参加賞を頂いてきた。手の込んだ切り絵が貼られたカバーのティッシュボックスで、うまくできている。先生方が時間をかけて一つ一つ丁寧に作ったもので、値段を超えた重みを感じた。

 当日の主役である子どもたちは先生と一心同体で、思い思いに個性豊かな演技を行っていく。練習を積み重ねたことがうかがえる。先生も演技中に座り込んでしまう子どもを怒らず、ずっと付き合い面倒をみる。

 終わりに近づくと大きな拍手の中、手作りのメダルを一人ずつ首にかけてくれる。その時の子どもたちは、最高の笑顔を見せてくれた。まるで、「手作りの運動会=ものづくり=人づくり」を見ているようだ。

 子どもたちは絵を描き、切り絵や折り紙でいろいろな形を作ったりして遊び、ものづくりの楽しさを学ぶ出発点にいるように感じた。次の世代のものづくりは、すでに始まっている。ぜひ継続してもらいたい。また、小さい次の世代も楽しみである。このような機会にこれからも立ち会いたいと思う。






(上毛新聞 2012年12月14日掲載)