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県立県民健康科学大地域連携センター長  柏倉 健一 (前橋市新堀町)


【略歴】慶応大法学部、千葉大医学部附属診療放射線技師学校卒。ジョンズ・ホプキンス大大学院修了。診療放射線技師、研究職を経て2003年に前身の医療短大に赴任。


大学の社会貢献活動



◎地域で活用「知」の資源



 近年、大学が果たすべき役割は大きく変わってきました。従来は、学術研究、人材育成が大学の活動の2本柱となっていました。公立大学協会によれば、学術研究は「国内外に通用する普遍的な真理研究」とされ、いわば「知の創造」と言えるものです。一方、人材育成(高等教育)は「専門知識を有し、社会に広く通用する人材の育成」と定義され、「知の継承」とも言える活動です。大学教員は先端的な学術研究を行い、その結果を学生への専門教育に還元する、という取り組みを通じてこのような役割を果たしてきました。

 これに対して、2005年1月に出された中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」において、大学の「第三の使命」としての社会貢献が明示されました。いわば、「知の活用」と言えるものです。答申には「教育や研究それ自体が長期的観点からの社会貢献であるが、近年では、国際協力、公開講座や産学官連携等を通じた、より直接的な貢献も求められるようになっており、こうした社会貢献の役割を、いわば大学の『第三の使命』としてとらえていくべき時代となっているものと考えられる」と記されています。同時に大学開放の推進も提言されました。この答申を受けて、06年12月に教育基本法が改正され、07年6月には学校教育法が改正されました。大学が果たすべき役割の一つとして、教育研究の成果を広く社会へ提供することが、法的にも明示されたわけです。

 私が勤務する群馬県立県民健康科学大学は、看護学部と診療放射線学部を持つ県立大学として05年4月に開学しました。大学としての歴史は比較的浅いものの、さかのぼれば、群馬県立医療短期大学、その前身の群馬県立福祉大学校と、看護師、保健師、診療放射線技師の養成校として長い歴史を持ちます。群馬県に根ざした学校として、臨床現場で活躍できる多くの医療専門職を育成することで、地域医療並びに県民の健康水準の向上に貢献してきました。

 このように人材育成という形で社会貢献活動を行ってきたわけですが、より直接的な連携を目的に、地域貢献活動を大学の基本機能の一つと考え、組織的かつ総合的な取り組みを実施することになりました。その拠点として、本年4月に「地域連携センター」が設立されたわけです。センターは、大学と地域を結ぶ窓口として地域の皆さまや医療機関に、大学の持つ知的・物的資源を活用していただく連携の場になるものと考えています。

 地域連携センターのセンター長として、次回から数回にわたり、その概要を紹介させていただければと思います。また、私自身の専門である脳機能測定研究や放射線の人体への影響などについてもお話をしたいと考えています。






(上毛新聞 2012年12月18日掲載)