,

視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
群馬大工学部客員教授  岩崎 春彦 (東京都府中市)


【略歴】前橋市出身。専門は緑化環境デザイン。首都圏で建築緑化の普及を展開。現在は本県を拠点に環境対策や地域活性化につながる緑化環境デザイン活動を推進。


緑への県民意識



◎良質な住環境へ知恵を



 今年の夏も暑かったですね。年々暑くなっています。確かにここ30年の前橋の平均気温推移を見ても1・5度程度上昇しているようです。地球温暖化による気温上昇が100年に1度と言われていますから大変なスピードで上昇していることになります。原因はいろいろ言われています。地球温暖化、都市温暖化(ヒートアイランド現象)、首都圏の人工排熱の移動等です。その中でもやはり大きな影響は都市温暖化と思われます。

 前橋の気象観測をしている気象台付近は、自分が子どものころは桑畑と麦畑がほとんどでした。赤城おろしの風が吹くと砂ぼこりで目が開けられなかった記憶があります。現在はどこの市街地もアスファルト道路となり立派な建物が立ち並びました。一方、これらの街並みの基本構造が自然の地表面や緑を減少させ、輻射(ふくしゃ)熱や蓄熱しやすい素材で被覆化されたこと、さらに自動車やクーラーの人工排熱が加わったことで、昼間の暑さの他に、夜の温度も落ちない熱帯夜が年々増加している環境にもなってしまいました。

 現在、この対策として自然エネルギーである「緑」の活用が全国的に主流になってきており、条例も含めて緑地創出の展開が活発化しています。そこで自分も委員をしている群馬県の街中緑化推進検討部会で、2011年に県内各市12カ所で「県民の緑と環境」に関する意識調査をアンケート形式で行い、大変興味ある結果が出てきました。

 まず、昔と比べて暑くなったと答えた人は94%いました。その原因はという問いに、住環境の変化と答えた人が61%。住環境の変化とはアスファルト舗装などの人工構造物の増加と緑の減少が挙げられていました。

 では、暑さ対策の方法を問うと、緑の活用を望む人が66%もいました。その緑の量について聞いてみると、県民の95%は自信を持って「緑多き群馬」と答えています。さてそこで、多くの人が暮らしている市街地の緑被率から見ると、県内各市の平均合計は30%に届きません。これは横浜市街地の緑被率とほぼ同じです。どうも県民は遠くに見える緑が身近にもあると錯覚しているのでしょうか。

 次に緑の印象を聞いてみると、心地良いと答えた人は82%で、不快と答えた人は18%でした。その原因として落葉処理や虫の発生など、まさに人間にとって自然の持つ不快さに対する率直な意見でした。このことは人が自然の中で暮らしているという認識であれば避けて通れないことと思います。その状況の中で少しでも人が快適に暮らすには、日ごろから各専門知識を持つ人たちにも参加していただき、良質な住環境を住民の知恵と工夫でつくる地域社会が必要になってくると思います。ちなみに緑の維持活動に参加希望される県民は86%もいました。







(上毛新聞 2012年12月21日掲載)