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◎活動通して楽しい町へ 憧れの農村暮らしを始め、2年目を迎える。私が神流町に住むようになったきっかけは、「緑のふるさと協力隊」というNPO緑化センターが行っている事業に参加したことだった。そのプログラムは、農村の暮らしに興味のある者が過疎に悩む地域で、活性化につながる活動を行いながら、1年間暮らすというものだ。その活動とは、地元農家との農作業、観光施設の手伝い、一人暮らしの高齢者訪問、デイサービス、子育てサロンなど多岐にわたる。どれも地元の人と密に関わらなければ成り立たない活動だ。 農家の方に教わりながら、たどたどしい手つきで種をまき、鍬くわでさくを切る。作業に疲れたら一休み。缶ジュースとお菓子を食べながら、昔の農家の暮らしの話を聞かせてもらったりする。高齢者訪問の際は、「元気してる?」から毎回始まる会話の中で、若かったころの話や戦時中の話などを聞かせてもらう。その当時にタイムスリップできる機会に恵まれ、先人たちの生き方を学ぶこともできた。 何も知らない農村という舞台に飛び込み、人生は大きく変化した。自分たちが普段食べているものがどう育っていくのかを知ったこと。山というのは、いろいろな種類の木や花や動物、土でつくられていること。家族以外の人たちと協力しながら生きていく方法を知ったこと。それは神流町に住まなければ気づけなかったものばかりだった。 東京で働いていた時、あたりを見渡せば土はなく、人工的に光る小ぎれいな道路ばかり。整備されすぎていて自然のパワーを押さえつけられた街路樹たち。しかし、その根元を見ると、アスファルトを盛り上げながら、力強く根を張って生きている。「自然の中で自分の根を見つめたい」。そう願い、神流町に来た私は今、町の観光案内所で働いている。2年前までは想像もできなかった憧れの農村での仕事だ。 しかし、ここに住む人は悲しそうに町のことを話す。過疎に悩む多くの地域に言えるかもしれないが、人を町につなぎとめることに絶対的な価値を置くのではなく、今残っている人たちが、どのように進んでいけばより楽しい町になるかを、もっとみんなで模索していければいいなと感じる。過疎を問題にしているのは、過疎地に住んでいる人たち自身なのかもしれない。 それでも農村は人を生き返らせる力にあふれている。そんな生命力あふれる農村に住む人たちが自分たちの地域に誇りを取り戻せるよう、また、都会に住む人たちが自分を取り戻し、再び進んでいく力を生みだすきっかけを提供できるよう、神流町での生活で感じたことを伝えたい。そして読者の皆さんとどこかで共有していければいい。 (上毛新聞 2012年12月23日掲載) |