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菜の花プロジェクトin甘楽代表  強矢 義和 (甘楽町白倉)


【略歴】富岡高卒。印刷・ウェブ関連デザイン事務所経営の傍ら、2004年に甘楽町で菜の花プロジェクトをスタート。ぐんま菜の花プロジェクトネットワーク代表。


菜の花畑の恵み



◎廃食油を回収、燃料に



 それは衝撃的な映像だった。天ぷら油の廃油で作った燃料で町の公用車が動いていたり、スタンドにバイオディーゼル燃料の給油口があり、誰でも自分の車に入れて走ることができる。たまたま見ていたテレビの映像は、滋賀県旧愛東町での取り組みを伝えるものだ。「これだ!」と思った。増え続ける遊休農地の有効活用と家庭から出る天ぷら油をバイオディーゼル燃料にして使えば環境にやさしいし、二酸化炭素(CO2)の排出はゼロカウントとなる。これをぜひ甘楽町でやりたい。そう思って旧知の方々に話をもちかけた。

 時を同じくして、県が本格的に菜の花エコプロジェクト推進モデル事業を行うということを知った。早速、その補助事業に手をあげ、町の振興課を通して、甘楽町で菜の花プロジェクトを立ち上げることになった。

 それから7年。当初町内5カ所、0・8ヘクタールから始めた取り組みが2011年度には、甘楽町内30カ所、富岡市内4カ所、しめて5ヘクタールの面積に広がり、会員やボランティア参加の方も30人以上になった。

 遊休農地が発生するのは、いままで畑を耕してきた方が高齢のために、またはお亡くなりになったために、畑を管理できなくなるのが一般的である。真面目に畑を耕し続けてきた農家のお年寄りに、雑草雑木で荒れ果てた畑を見せるのは何とも忍びがたいものがある。そうして私どものプロジェクトに電話をしてくれる方が年々増えているのだ。

 でき上がった菜たね油は「甘楽の里 菜たね油」として会員の家庭の食卓に行くのはもとより、道の駅甘楽や町内外の協力店で販売し、おかげさまで香ばしくておいしい料理ができると好評だ。使った後の油はためておき、バイオディーゼル燃料としてディーゼルエンジンのトラックやトラクターに入れて使う。甘楽町では08年から、われわれの提案で町内の家庭などから出る天ぷら油の廃油を回収し、一括してバイオディーゼル燃料にリサイクルするようになった。小さいながら町では資源循環のモデルができた。

 県内にはおよそ20カ所の菜の花関連団体が規模の大小を問わず、以上のような活動を行うようになった。その背景には地球温暖化への警鐘、農と食への関心の高まり、環境意識の向上があると思う。そして、この事業を行うのは人であり、取り組みを進める中で、環境や農の大切さ、食の安全などを学び、楽しく語らい成長できることが魅力だ。菜の花エコをすすめる人がきのうより今日、昨年より今年というふうに増えてきているのである。

 たった一人でトラクターを走らせていても、私の後ろでは多くの会員の皆さん、畑のオーナーの皆さんが応援してくれるという思いを励みに、これからも進んでいきたいと思う。







(上毛新聞 2012年12月26日掲載)