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伊香保おもちゃと人形自動車博物館長  横田 正弘 (前橋市荒牧町)


【略歴】高崎市出身。起業した年商10億円の建設会社をたたみ、1994年に伊香保おもちゃと人形自動車博物館を設立し、17年連続黒字。同館運営会社ドーリー社長。


博物館の経営



◎施設、文化向上に努力を



 伊香保おもちゃと人形自動車博物館をオープンして18年がたちました。私が40歳の時です。オープン当初は「おもちゃと人形博物館」。自動車博物館や駄菓子屋横丁などは後々、新施設としてオープンしたものです。当博物館は常に進化を続けていますから。

 18年前、私が博物館を始めると言った時は、周囲の人間、全員に反対されました。博物館なんて簡単にできるもんじゃない、もって半年だ、絶対つぶれるなど、賛成してくれる人は誰一人としていませんでした。もちろん私を心配して言ってくれていたのだとは思いますが。しかし、現在に至っては旅行新聞刊行「プロが選ぶ観光・土産物施設百選」に12年連続で入選しています。博物館では唯一です。

 博物館をオープンする際、日本中の主な博物館を訪れました。そして、お金を払ったことを後悔する施設の多いことに驚きました。私は、「なんでこんなところが千円もするの」とは絶対言われないように、そして「また来たいね」と言ってもらえる博物館を造りたいと心底思いました。

 他の博物館にない仕掛けはなんだろう、客目線の博物館の見せ方は…と半年間、ろくに寝ないで考え続けました。そこで考えついたのが時代背景の実物大ジオラマを作り、展示物をはめ込む、という展示方法です。当時の博物館はショーケースの中に展示物を並べているだけの展示方法が主流でした。今でこそ昭和の街並みやヨーロッパの街並みを造り、展示している施設は多くありますが、当時はありません。私が必死で考えた展示方法です。一歩足を踏み入れるとタイムスリップする、どの世代でも楽しめる方法です。

 よく、コーディネーターがいるのですかとか、デザイナーは誰ですかとか聞かれますが、私の場合、すべて自分で考えています。自分でデザインし、仕入れをし、コーディネートしています。私自身が究極の収集家ではないので、かえってお客さまが喜ぶ目線を見つけやすいのかもしれません。

 日本には国、県、市町村経営のハコモノ施設が数多くあります。それらはすべて税金で賄われています。施設に携わっている人に言いたい。あなたが簡単に使っているそのお金は皆さんの血税なんですよ、と。もちろん素晴らしい施設もたくさんあります。しかし、入館者数を伸ばそうと努力している施設は非常に少ない。施設運営に携わる人の、経営に対する考えが甘すぎるからだと私は思います。お金は申請すれば自治体から出てくるものと思っているのでしょう。入館者数が少なくてもつぶれないと思っているのです。危機感が薄いのでしょう。もう少しお金の使い方を考え、施設向上、文化向上に気持ちを入れてほしい、そう思います。







(上毛新聞 2012年12月27日掲載)