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太田青年会議所 2012年度地域の宝育成委員長  
                             深沢 利弘
(太田市飯塚町)


【略歴】伊勢崎市生まれ。立命館大政策科学部卒。警備業「シムックス」社長。太田青年会議所やNPO法人に所属し、まちづくり活動に取り組んでいる。


子どもの起業体験



◎目標に向かい自発的に



 「開店日は8月25日、場所はぐんまこどもの国児童会館、お店はお菓子屋さんとTシャツ屋さん。何を売るか、いくらで売るかは全部君たちが考えるんだ」

 6月17日、19人の小学4~6年生に、そんなミッションを与えた。太田青年会議所(塙保仁理事長)が主催した起業体験活動「自分たちの会社を作ろう!!」はここから始まった。

 この起業体験は、実社会さながらに会社設立から商品企画、製造、宣伝を経て、販売では本当にお客さんに現金で買ってもらう。子どものコミュニケーション力やチャレンジ精神を養い、目標に向かって行動する力を身につけることを目的として企画した。

 学校も学年も違う子どもたち。活動はおおむね週1回、期間も2カ月強と時間は限られている。指導する私たち会議所メンバーも、日ごろ当たり前のように働いているが、子どもに一から教えるとなると勝手が違う。不安と戸惑いのスタートだった。

 初めは会社の設立。19人の子どもが洋菓子店と服飾店に分かれ、リーダー役の「社長」を決め、会社名も「社員」で意見を出し合って決める。

 だが、なかなか自分の意見を言えない子や、集中できずにふざけてばかりの子もいた。その後も、マーケティングとして街頭アンケート調査、商品企画書を持ち寄ってのプレゼンテーションと続くが、意見がぶつかってけんかになるグループも。

 だが、活動が進むにつれ、さまざまな課題を話し合いで解決できるようになった。PRのため地元のラジオ番組に出演が決まり、「何を話せばいいの?」と聞かれたので、「自分で考えておいで」と任せたところ、しっかり台本を書いてきた。デザインしたチラシが刷り上がって納品されれば、頼んでもいないのに「今度の登校日に、クラスのみんなに配るよ」。私たち大人が指示しなくても、子どもたち同士で話し合い、どんどん動きだしていた。

 いよいよオープン当日。「社員」たちは緊張しながらも士気は最高潮。宣伝や報道のおかげもあって、開店直後からお店には長い客列ができた。「レジ係をやりたい」と買って出たやんちゃな男の子は、おつりを数え間違えないよう黙々と取り組んだ。「いらっしゃいませ。本日限定販売です。お早めにお買い求めくださ~い」。販売係の女の子は、事前に教えた接客用語以外にも、状況に合わせて呼び込みを工夫し始めた。

 目的達成のために自分は何をしたらいいか、ひとりひとりが考え、お互いに声を掛け合う。立派なチーム=会社に成長していた。目標をきちんと理解させて、役割を与えれば、子どもは驚くほど力を発揮する。目標に向かってがんばることの大切さとすばらしさを、見守った私たちの方が教えられた。







(上毛新聞 2012年12月30日掲載)