文字サイズを変更する
小
中
大
 

群馬県のニュース

「お前はまだグンマを知らない」 身近な事象をネタに 

更新日時:2017年3月20日(月) PM 07:00
 人気漫画「お前はまだグンマを知らない」の勢いが止まらない。群馬という地方を題材とした作品でありながら、単行本の累計発行部数は70万部に迫っている。今月7日に始まったドラマも好評。県ぐんまイメージアップ推進室は「ドラマの盛り上がりが、群馬のPRにつながる」と歓迎している。

 「お前は―」は高崎市在住の漫画家、井田ヒロトさんが新潮社のウェブマガジン・くらげバンチで連載中。舞台は謎の「グンマ県」で、他県から転校してきた主人公が同級生の強すぎるグンマ愛に翻弄ほんろうされる様子をコミカルに描いている。

■予想外のヒット
 井田さんは神奈川県出身で、中学1年の時に同市に転入、本県で学生時代を過ごした。主人公が受ける数々のカルチャーショックは実体験がベースだ。20代でデビューし、ヤング漫画雑誌を中心に活躍。2013年に連載8作目の「お前は―」をスタートした。

 「話題になるとは思ったが、ドラマ化までのヒットは予想外」。担当編集者の折田安彦さんも反響の大きさに驚く。当初は別の漫画の“おまけページ”として始まった企画。第1話が公開されると、ツイッターで人気が高まり、メディアも次々と取り上げた。

 ヒットの素地はあった。10年ごろからご当地本がブームとなり、「群馬あるある」をテーマとした書籍が相次いで出版された。同じ頃、群馬が全国統一を目指すゲームアプリ「ぐんまのやぼう」がヒット。「未開の地」「秘境グンマー」などネット上での話題を逆手に取り、「実はすごい」と特産や特徴をPRする作品が目立ち始めた。

 ドラマ化に踏み切った日本テレビも、そこに目を付けた。「今話題の地方ネタで各エピソードが際立っておもしろい」(同局)と実写化を進め、ツイッターによる情報発信で盛り上げた。

 初回は深夜帯ながら平均視聴率が5.3%(関東地区の世帯調査、ビデオリサーチ調べ)と好調な滑り出し。放送後はツイッターのリアルタイム検索で急上昇ワードにランクインするなど、若い世代を中心に大きな反響があったという。

■歴史やグルメ
 数あるご当地本の中でも、なぜ「お前は―」はヒットしたのか。複製原画展を開催しているギャラリーアートスープ(前橋市本町)の中林智洋代表は「地元住民すら知らない歴史をネタに昇華し、物語化する構成力は他を圧倒している」とみる。

 「高崎市の群馬の森一帯にかつて陸軍の火薬製作所があった」「嬬恋村出身の豪商、中居屋重兵衛は火薬のスペシャリストだった」といった歴史的事実だけでなく、「七福神あられにココア味がある」などグルメ情報まで、身近な事象から「群馬のすごさ」をあぶり出すネタの深みが、県民の郷土愛を刺激し、共感を呼んでいるようだ。

 知名度が低く「地味県」のレッテルがつきまとう本県だが、歴史や風土を磨き上げれば若者の心をつかむ仕掛けになる。「お前は―」のヒットは本県の観光戦略に大きな示唆を与えそうだ。

 《メモ》 ドラマは全4話。主人公を演じる俳優、間宮祥太朗さんの顔芸やヒロイン、馬場ふみかさんのお色気シーンも話題に。県内でも撮影され、赤城山や有名パスタ店など、県民が見れば分かる「名所」も登場している。第3話は21日午前0時59分~同1時29分に放送。

◎単行本売り上げ 全国25%占める 県内書店
 「お前はまだ―」のドラマ化を受け、県内の書店でも、作品や井田さんへの注目度が高まっている。

 地元作家として井田さんを応援してきたくまざわ書店高崎店(高崎市八島町)は、売り場を拡大してPR。同店では、1巻の販売部数が発売から2月上旬までで約3200冊に達した。この数字は全国の書店でも上位だ。同店のコミック担当者によると「他のコミックと比べても驚異的な数字。うちでは日本一売れているという人気漫画『ワンピース』より売れている」と驚く。

 これまでも若者を中心に売れていたが、ドラマ化が発表された2月上旬から中年のサラリーマンや年配の女性が「全巻買い」するなど、幅広い年代で関心が高まっているという。

 単行本の売り上げは、県内の書店で全国の25%を占める。他の書店も特設コーナーを設けるなど力を入れており、作中で取り上げられた上毛かるたを一緒に置く店舗が多い。

◎無視できない執着心 高崎在住・原作者 井田ヒロトさん

 「お前はまだグンマを知らない」で過激なまでの郷土愛を描く漫画家、井田ヒロトさんに、作品に込めた思いや郷土愛について聞いた。

―今月放送のドラマが好調だ。原作者としてどう受け止めているのか。
 ドラマ化と聞いた時、「誰が見るんだろう」と思った。どんな風に描かれるのか怖くて、リアルタイムでは見られず、放送時間はツイッターの反応ばかり見ていた。実際は原作とだいたい同じ。ソウルは受け継いでもらった。

―映画化も予定されている。県内を中心にヒットした理由は。
 群馬県民は共通認識が多く、郷土の知識が豊富。その一つが上毛かるた。漫画に描いても、「そうそう」と分かってもらえる。他県だったらこうはいかない。

―相当コアな歴史まで書き込んできている。
 まだ描いてないことだらけ。中島飛行機や限界集落と言われる南牧村はいずれは描きたいと思っているテーマ。ついつい好きな歴史物が増えてしまうので、身近な「あるあるネタ」を増やしたい。

―井田さん自身が名場面ベストスリーを選ぶなら。
 1位は上毛かるたの誕生秘話(4巻)。どうしても描きたくて、かなり長くなってしまった。次は主人公が転校し、グンマの風習に戸惑う第1話(1巻)。これはほぼ実体験。3位は関東が舞台の超高電圧(UHV)送電計画(5巻)かな。本編で描ききれないネタは、カバーを外した本の外側に描いているので、見たことない人はぜひどうぞ。

―最近は県内の自治体や企業のPRポスターにイラストが採用されている。
 地元ありきの漫画なので、県内の仕事はなるべくお受けしたい。これまでザスパクサツ群馬のポスターや前橋市の歴史イベント「四公祭」のイメージイラストを手掛けた。上毛新聞社と自治体、企業による若者定住キャンペーン「ぐんま愛 ここに生きる」のポスターも好評でうれしい。

―ドラマは強すぎる「グンマ愛」が話題になっている。井田さんにとっての郷土愛とは。
 群馬に根ざした人間が持っている根っこのようなもの。たとえ嫌いであっても、その土地を無視できない執着心のような感情。ドラマは漫画と同じ群馬への偏執が感じられる。ぜひ皆さんで見て、「これぞ群馬」と広めてほしい。

※詳しくは「上毛新聞」朝刊有料携帯サイト「上毛新聞ニュース」でご覧ください。

売り場を拡大し、複製原画やサイン色紙も飾ったくまざわ書店高崎店

 

前橋市のギャラリーアートスープは、27日まで原作の複製原画展を開いている

 

ドラマ「お前はまだグンマを知らない」の一場面(c)日本テレビ