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 シカから湿原守れ 尾瀬に防護柵5キロ 「食圧」「踏圧」防止で 環境省が着手
2008/05/09掲載
尾瀬のシカ防除対策実施場所
尾瀬のシカ防除対策実施場所
   尾瀬のシカが急増していることを受け、環境省は本年度から、尾瀬沼に接する大江湿原と浅(あざみ)湖湿原を電気柵やロープ柵などで囲い込み、シカの進入を防御する植物被害防止策に乗り出す。尾瀬ケ原でも行う。シカの生息密度が高い両地区は、貴重な植物が食い荒らされたり、踏み荒らしの被害を受けている。植生への影響を調べるため、写真撮影による湿原の定点観測も実施する計画で、シカの管理計画策定の基礎データとする。 

 防護柵を設置するのは、ニッコウキスゲの大群落への被害が著しい大江湿原と隣接する浅湖湿原。リュウキンカの被害が出ている中田代へのルートの二カ所。
 計画では、大江湿原と浅湖湿原は約四キロにわたり電気柵とロープ柵、ネット柵で湿原を取り囲んで進入を防御。中田代に向かうルートはシカの進入路をさえぎるように約一キロにわたりネット柵やロープ柵を張る。柵の種類や場所などは、今後、現地で具体的な検討を行い柔軟に対応していく。シカが嫌がる周波数の音を出す音声装置も併設する。
 環境省などによると、本県側で越冬したシカは、五月下旬から六月中旬にかけて大江湿原や尾瀬ケ原を目指して移動する。近年はそのまま初冬までとどまる個体群と、尾瀬を通過する個体群の二極化傾向にあるが、両個体群ともにミツガシワやミズバショウを採食する。さらに、そのまま滞留する個体群がニッコウキスゲやヤナギランなどを食べ、植物への「食圧」、湿原の「踏圧」が問題になっている。
 特定の植物が採食されると、湿原の植物構成が変わってしまう恐れがある。そのため、同省は尾瀬パークボランティアの協力で、大江湿原と浅湖湿原で植生の定点観測も実施、植生の経年変化についてモニタリングを行う。観測ポイントとして湿原や大江川を見渡せる十カ所ほどが候補として検討されている。
 九八年に最大二百五十七頭と推定された尾瀬のシカは、二〇〇七年には約二倍の五百二十四頭に増加。増加ペースに拍車が掛かっており、三年後には千頭に達するとの予測もある。
 環境省は猟銃以外での効率的な捕獲法を検討しており、移動ルートを特定するため残雪期の足跡調査も行う。尾瀬への進入ルートを特定することで、わなを設置する場所を絞り込む際の資料にする。尾瀬への進入ルートは現在、大清水方面からの二ルートと福島県側からの一ルートが判明しているが、越冬地や尾瀬ケ原に直接進入するルートなどが未解明となっている。