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 《著者に聞く》 「尾瀬 至仏山殺人事件 写真家・剣平四郎の撮影事件帳」 新井幸人さん “原点”舞台に初の小説
2010/07/18掲載

 写真家として尾瀬を中心に28年間、全国各地の自然を被写体として追い続けている。今回、作家デビューとなる推理小説「尾瀬 至仏山殺人事件 写真家・剣平四郎の撮影事件帳」を著した。
 「いつか推理小説を書いてみたいと思っていた。尾瀬は写真家としての原点だから、最初の舞台に設定した」と作品への意気込みを語る。
 政官業の癒着を追い掛けていた青年記者の「事故死」に疑問を持った主人公、剣平四郎が、全国各地を駆け巡りながら事件解決に挑む。装丁や文中には現場を想像できるよう挿絵の代わりに、自ら撮影した写真を使った。
 執筆を始めたのは昨年春。自身が撮影に訪れ、思い入れのある場所を舞台とした。主人公は自身と同じ写真家とした。「推理小説といえば、主人公は刑事か探偵が定番。畑違いの人物を設定して難しい専門用語に凝るよりも、生業を生かした方が読者にも親切ではないかと思った」と狙いを語る。
 本書のもう一つの特色は、作品の舞台となる全国10カ所のガイドが掲載されていること。手にした読者が、事件解決までの道のりを実際に歩きながら楽しめるように工夫した。
 小説の起点となる「尾瀬」では、至仏山周辺の見どころや散策ルートを紹介。撮影スポットや登山の心構え、山小屋宿泊のルールなど、自身が撮影した尾瀬の写真を使って構成している。このほか、丹後半島や白神山地、秋田市、小石川後楽園などの散策ルートも掲載している。
 剣平四郎を主人公にした第2弾を写真雑誌に連載中で、秋には第3弾を執筆、シリーズ物として刊行する予定だ。
 「尾瀬の山小屋利用者は年々減っている。少しでもお世話になった方々への恩返しが小説を書くことでできたらと思っている。長くテーマにしてきた自然の風景を舞台に、今後も執筆活動を続けていきたい」と作家としての意気込みを語った。

 「尾瀬 至仏山殺人事件 写真家・剣平四郎の撮影事件帳」は日本写真企画、1300円。
 あらい・ゆきひと 1953年、旧赤城村生まれ。村職員を経て、82年に写真家として独立。74年から尾瀬を撮り続け、写真集「尾瀬・四季」や「尾瀬国立公園ガイド」などを出版。