無限の表情 尽きせぬ魅力 尾瀬国立公園
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 《へぇ そぉなん!》 尾瀬駆け抜ける夏 意外な見どころ紹介
2010/07/20掲載
“尾瀬ヶ原と本県側の至仏山(燧ケ岳の山頂部から)
“尾瀬ヶ原と本県側の至仏山(燧ケ岳の山頂部から)
“「竜宮」の入り口。大水の時は、水が渦を巻いて吸い込まれていく
“「竜宮」の入り口。大水の時は、水が渦を巻いて吸い込まれていく
“「竜宮」の出口。澄んだ水中にはアブラハヤなどが生息している
“「竜宮」の出口。澄んだ水中にはアブラハヤなどが生息している
“片品村の鳩待峠入山口に置かれている「種子落としマット」
“片品村の鳩待峠入山口に置かれている「種子落としマット」
“澄んだ水面に水草が浮かぶ池塘。その先は燧ケ岳
“澄んだ水面に水草が浮かぶ池塘。その先は燧ケ岳
“絶滅危惧種のナガバノモウセンゴケ
“絶滅危惧種のナガバノモウセンゴケ

 ミズバショウやこれから見ごろを迎えるニッコウキスゲが人気の尾瀬。登山やハイキングでにぎわう名所だが、意外に知られていない尾瀬の見どころもある。

◎救世主 ダム計画止めた希少な食虫植物
 尾瀬の植物の主役は、ミズバショウやニッコウキスゲのほかにもある。国の絶滅危惧(きぐ)種に指定されている食虫植物のナガバノモウセンゴケがその一つ。湿原の表面近くをよく見ると、赤っぽい色をした植物が群生している。栄養分に乏しい湿原の中で生きてゆくため、赤い腺毛の先から粘液を出して昆虫を捕らえて栄養補給している。明治期に尾瀬で確認され、尾瀬のダム計画の中止を求める重要な根拠となった。尾瀬の救世主のような存在だ。

◎燧ケ岳 東北以北で最高峰
 尾瀬ケ原と尾瀬沼の間にそびえる燧ケ岳(ひうち)(福島県桧枝岐村)の標高2356メートルは、北海道の最高峰・大雪山(2290メートル)よりも高く、東北地方以北で最高峰。燧ケ岳は、およそ8千年前に大きな岩なだれを起こし、川をせき止めて尾瀬沼ができたと考えられている。
 山頂部分からは、尾瀬ケ原やその先の至仏山(2228メートル)、尾瀬沼などの雄大な眺めを楽しむことができる。

◎竜宮 水吸い込まれ50メートル先でわく
 水吸い込まれ 50メートル先でわく
 尾瀬ケ原の中心部の「竜宮」という地名の辺りでは、流れてきた水が突然湿原の穴に吸い込まれ、50メートルほど離れた地点でわき出ている。大雨で倒木が吸い込まれたのに反対側から出てこなかったという言い伝えがあり、昔の人はこの穴が竜宮城まで通じていると考え、「竜宮」と呼ぶようになったという。不思議な現象は入山者の想像力をかき立ててくれる。

◎マット」 入山口に設置 外来植物防ぐ
 尾瀬には、オゼソウなど「氷河期残存植物」といわれる希少な植物が自生する。このため、外来植物の侵入をできるだけ少なくする狙いで、本県側の入山口に「種子落としマット」が置いてある。
 入山前にマットの上を歩きながら、靴底に付いている植物の種子やごみを落とせる。地元の尾瀬高生がマットに落ちた種子を2004年に回収して発芽させたところ、トマトやオオバコなどだった。

◎池塘 池雪や雨水を集め 動植物の生命線
 尾瀬ケ原のあちこちに点在する池「池塘(ちとう)」には、ヒツジグサやオゼコウホネなどの水草が自生し、イモリやヤゴなどが生息している。この豊かな水は、雪や雨水が供給源。ほかの池塘とはつながっていないし、大雨の時以外は、河川からの水流もないのが特徴だ。

◎四季 半年間は「冬」 残りが春夏秋
 5月下旬ころになると尾瀬はほとんどの残雪が消える。ミズバショウなどの植物がいっせいに芽吹き、夏のニッコウキスゲ、秋の草紅葉(もみじ)へと季節が駆け足で変わる。10月中旬ごろまでには雪が降り始める。尾瀬の四季は半年が冬で、残る半年で春・夏・秋が過ぎると言える。
 尾瀬保護財団によると、尾瀬ケ原(山ノ鼻地区・片品村)の年間平均気温は4〜5度。前橋よりも約10度低く、冬は氷点下30度に達することも。年間降水量は約1800ミリで前橋の約1・5倍、冬期の積雪は3〜4メートルに達する。涼しく雨の多い気候が尾瀬ケ原などの植生をはぐくんできた。

◎メモ
 尾瀬は本県、福島、新潟、栃木の4県にまたがる山岳地域。2007年に日光国立公園の尾瀬地域に福島県側の会津駒ケ岳(2133メートル)などを加えて、尾瀬国立公園として誕生。面積は約1.5倍(約3万7000ヘクタール)になった。本県側の至仏山など、2000メートル級の山々に囲まれている。尾瀬ケ原は、国内最大の山岳湿地。