無限の表情 尽きせぬ魅力 尾瀬国立公園
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 《論説》尾瀬山開き 保全を意識し行動を
2016/5/26掲載
 尾瀬沼の雪 例年より1カ月早く消える―。尾瀬国立公園の山開きの式典(6月1日、新潟県魚沼市)を前にした5月上旬、尾瀬の環境異変が懸念されるニュースが報じられた。近年はシカによる食害や湿原の踏み荒らし、外国人のマナー違反などが原因で、貴重な自然が脅かされている。尾瀬を守り、後世に残すため、県民、国民がこうした問題に真剣に向き合わなければいけない時期が来ている。一人一人が保全への意識を高め、行動したい。
 自然保護の聖地とされる尾瀬。1972年から始まったごみ持ち帰り運動の発祥の地でもある。今では日本人の常識となっており、湿原に立ち入るハイカーもいない。
 一方で、自然を傷つける外国人の行為が問題化している。観光庁の調べ(速報値)で、県内に宿泊した外国人は2014年に初めて10万人を突破、15年は16万人を超えた。尾瀬を訪れる外国人も増加している。今年は片品村と栃木県日光市を結ぶ路線バスの24年ぶりの復活も追い風となり増加が見込まれる。
 尾瀬保護財団は、日本語、英語、中国語、韓国語を併記したマナー啓発チラシを昨年製作。宿泊施設、交通機関、ビジターセンターで配布している。ガイドが違反行為を見かけた際にチラシを渡して注意することもあり、外国人に訴える機会が増えた。財団は目に見える効果はないとするものの、継続は力。地道に浸透させていきたい。
 旅行者の多くがインターネットで事前に情報収集する時代。尾瀬の案内とともにマナーを掲載する財団ホームページ(HP)を閲覧してもらうためのPRや改善も必要だ。現在、外国人向けに、チラシ同様、日本語のほか、四つの言語で見られるが、アクセスは少なく、マナー周知に結び付いていない。尾瀬観光だけでなく周遊している外国人が多いことから、ほかの目的地を調査し、その関連HPとリンクさせれば、誘導できるだろう。
 日本人ハイカーが模範となり行動で示すことも大切だ。あらかじめ啓発チラシを入手し、外国人の違反行為を見かけたら手渡すのはどうだろうか。言葉の心配はいらないし、注意の目が注がれていることが伝わり抑止効果が期待できる。
 シカによるミズバショウなどの食害や、湿原の踏み荒らしについては現在、県や国などが駆除や侵入を防ぐ柵を設置して被害の拡大を食い止めている。ハイカーが直接活動に関わることはできないが、財団に寄付することで、支援につながることも知っておきたい。
 尾瀬保護の担い手である山小屋を利用すれば、間接的に協力することになるし、乗り合いタクシーが運行される大清水口からのルートを楽しむだけで、鳩待峠口への一極集中が解消され、環境負荷が軽減できる。負担を感じることなく行動できることは多い。