無限の表情 尽きせぬ魅力 尾瀬国立公園
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 《雪解けを待つ 尾瀬国立公園10年(上)》規制から誘客へ 利便性と保全両立課題 開山
2017/05/02掲載
スキーやスノーボードを楽しむため、鳩待峠から至仏山へ向かう人たち=4月28日午前11時40分ごろ
スキーやスノーボードを楽しむため、鳩待峠から至仏山へ向かう人たち=4月28日午前11時40分ごろ
 尾瀬国立公園が2007年8月に日光国立公園から独立し、今年で10年を迎える。尾瀬ケ原への玄関口となる片品村の「山の鼻ビジターセンター」は今月15日に開所。19日には安全祈願のための「山開き」が予定されている。雪解けとともに、かれんな姿を現すミズバショウ、湿原に映えるニッコウキスゲなど、季節ごとにさまざまな表情を見せる尾瀬。節目の年のシーズン本格化を前に、現状や課題について考える。
 ◇   ◇ 
 大型連休直前の4月28日、同村の津奈木橋―鳩待峠間(3・5キロ)の冬季道路閉鎖が解除され、鳩待峠から尾瀬への立ち入りが実質的に可能となった。
 残雪が多く、例年より1週間ほど遅れた閉鎖の解除。午前10時の開門に合わせて約70台の車両が列をなした。7日までの期間限定でスキーやスノーボードが楽しめるとあって、大勢の愛好者が鳩待峠から徒歩で至仏山(標高2228メートル)へ向かった。

◎ピークから半減
 公園への入山者は減少が続く。国立公園が誕生した07年度の約35万人から16年度は約29万人。約65万人いたピーク時(1996年度)から比べると半減以下となり、山小屋の経営を圧迫する。
 山小屋は尾瀬ケ原や尾瀬沼周辺などに約20軒あり、日帰り圏内でない登山者や、自然とじっくり向き合いたい人たちが利用する。経営が立ち行かなくなれば、ハイカーの受け皿がなくなり、観光面での魅力低下は必至だ。
 尾瀬山小屋組合長の関根進さん(71)は「これまでは入山規制が議論されたが、今は誘客を考えてもいいと思う」と力を込める。国立公園10年を契機に、組合もPRを強化する考えだ。

◎通信環境整備
 さいたま市で3月に開かれた尾瀬国立公園協議会。本県と福島、新潟、栃木各県と環境省の関係者らが、公園内にある施設の通信環境を整備する方針で合意した。通信大手のKDDI(東京)が特別保護地区に光ケーブルを敷設する計画で、必要な工事が済めば、山小屋などで携帯電話やインターネットが使えるようになる。
 特別保護地区の携帯電話基地局整備を巡っては緊急連絡手段の確保を求める声と、環境保全の観点から反対する意見が対立した経緯がある。計画は既存電線に沿うケーブル敷設で、景観の支障となる新たな工作物の設置はないとした。
 計画について環境省は、@利便性の向上A情報提供の拡大B山小屋関係者らとの情報共有の円滑化―の利点を見込む。ただ、屋外使用は静かな尾瀬の環境保全の妨げになるとして、引き続き慎重な姿勢だ。
 山小屋の元経営者、萩原始さん(82)=片品村戸倉=は尾瀬での携帯電話の利用が進んだ場合の影響を懸念しながら、「日本の自然保護の原点とされる尾瀬でマナーを議論し、ここでの使い方が『尾瀬ルール』として各地に広がったらいいのでは」と話した。課題や環境の変化を受け止めながら尾瀬はもうすぐ、ハイカーたちを出迎える季節となる。