無限の表情 尽きせぬ魅力 尾瀬国立公園
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 《雪解けを待つ 尾瀬国立公園10年 (中)》環境 瀬戸際の生態系
2017/05/03掲載
昨シーズンの尾瀬ケ原。例年より早くミズバショウが見頃を迎えた=2016年5月12日
昨シーズンの尾瀬ケ原。例年より早くミズバショウが見頃を迎えた=2016年5月12日
 貴重な動植物が国際的に認められ、「ラムサール条約湿地」に登録されている尾瀬国立公園。1970年代から「ごみ持ち帰り運動」が展開されるなど、自然を守る努力が続けられている。一方で、温暖化の影響とみられる気候の異変や、ニホンジカの行動範囲拡大といった“外圧”が尾瀬を襲う。

◎例のない少雪
 「積雪量0センチ」―。昨年5月7日、片品村の鳩待峠の観測データは記録的な数値を示した。平年の5月上旬の積雪量は約160センチ。昨冬は「過去数十年間に例のないほどの少雪」(県尾瀬保全推進室)だった。
 早い雪解けは、尾瀬を象徴するミズバショウの開花を2〜3週間ほど前倒した。シカの始動も早まり、湿原の踏み荒らしや草花の食害が目立った。
 かつて尾瀬にはシカがいなかった。90年代に生息が確認されると、植生のかく乱が顕在化。雪解けに合わせ、シカは栃木県側で接する日光国立公園から侵入、冬場に戻る行動を繰り返す。環境省などは生息数を把握しようとするが、湿地帯のためふんを見つけづらく、生息数の全容を推定するのも難しい。
 被害の深刻化を受け、本県と福島県、環境省は2013年度から、わなや猟銃で年間200〜400頭を捕獲している。湿原の一部を柵で囲む対策もしているが、手間とコストが課題だ。同省片品自然保護官事務所は「対策を地道にやるしかない」と受け止める。

◎65年ぶり大調査
 65年ぶりの大規模な基礎調査を含む「第4次尾瀬総合学術調査」が5月下旬にも始まる。学術調査としても20年ぶりで、研究者による調査団が3年計画で尾瀬の現状を把握し、気候変動が生態系に与える影響を詳しく調べる。
 小型無人機「ドローン」の空撮で植生分布を把握したり、シカの侵入による土壌への影響調査などを予定する。雪が少なかった昨冬に対し、今冬は雪が多く残るなど、目先の気候変動を見るばかりでは大きな流れはつかめない。外圧が生態にどう影響するか。調査について、調査団事務局の尾瀬保護財団は「生態系の実態を解明し、将来の対策に生かしたい」としている。