無限の表情 尽きせぬ魅力 尾瀬国立公園
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 《オピニオン1000 主張》元尾瀬ガイド協会長 塩田政一さん(74) 尾瀬国立公園10年 現地訪れ保全意識を
2017/06/25掲載
 尾瀬国立公園が誕生して8月で10年。尾瀬の魅力をPRしたり、課題を考える事業が県内外で展開されている。一方で、近年はシカによる食害や踏み荒らしで美しい自然が脅かされ、入山者は減少傾向であり山小屋の経営難などの課題が浮上している。元尾瀬ガイド協会長の塩田政一さんは尾瀬を守るためには現地で貴重な自然に触れ、保全への意識を高めてほしいと訴える。
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 尾瀬を保護するには誰も行かなければいいという考え方もあるが、実際に足を運ぶことが大事だと思っている。美しいものを見ると心が豊かになり、自然保護の思想が芽生える。表面上の美しさを味わうだけでなく、ガイドの解説で知識を深め、なぜ大切なのかを理解してもらいたい。
 ガイドをしながらこの10年で大きな変化を感じているのは、シカの問題だ。尾瀬ケ原ではニッコウキスゲがほとんど見られなくなった。一時は絶滅の危機を感じた大江湿原のニッコウキスゲは、ネット柵などの対策でシカが来なくなり半分ぐらいまで回復した。ネット柵は景観を損ねるかもしれないが、ハイカーのためにもニッコウキスゲの復元が大事であり、設置が一番の対策だと思っている。シカの駆除は追いついていない印象だが、対策の一つとして、地元で公務員ハンターを雇うことを提案したい。季節に関係なく駆除できるようになるため、シカを減らすには有効だ。第4次総合学術調査が今月始まったが、こうした問題に有識者が今後どう判断するか注目したい。
 入山者は1996年の約65万人をピークに減少し、近年は30万人前後で推移。宿泊者も減り山小屋の経営を圧迫している。緊急避難所となる山小屋がなくなってしまうのはハイカーにとって重要な問題だ。遭難者の捜索や、ごみ拾いなどでも協力しており、山小屋は尾瀬にとって欠かせない存在。日帰りの4、5時間の滞在では見られない、朝の美しい景色や街灯のない夜の星空などを楽しむためにも山小屋は必要で、経営のためにも宿泊してもらいたい。今は個室対応があり、食事もおいしい。ぜひ利用し、きれいな尾瀬に触れ、大切さを実感してほしい。特に、片品村民には尾瀬の魅力を知るために宿泊を勧めたい。国立公園誕生10年の節目を機に、保全の意識が地元から県内に広がることを望んでいる。
(取材・構成 浜名大輔)
 しおだ・まさかず 栃木県出身。ぐんま森林インストラクター会長。NPO法人片品・山と森の学校代表。日本山岳ガイド協会認定ガイド。第21期委員。片品村鎌田