◎自給自足
県内の銀行に勤める中之条町伊勢町の篠原一美さん(56)は、定年退職まであと4年。退職後は妻と二人で、母の住む赤岩地区の実家にUターンし、第二の人生を始めるつもりだ。「自給自足の農業をして、訪れる観光客にお茶でも出せたら、それで幸せ」。のどかな老後の日々を思い描いている。
篠原さんは学校を卒業後、父親とともに同地区で酪農や林業に就いたものの、思うような収入が得られなかった。やむなく会社勤めを始め、さいたま市への転勤で古里を離れた。
同市のマンションを買う契約の一歩手前で、「田舎に住みたい」と小学生だった娘3人に言われ、目が覚めた。「私たち家族はやっぱり田舎育ち。都会に暮らしていても、心が落ち着く場所は田舎なんだ」。子供たちが素朴な心を失っていなかったことが、うれしかった。
中之条町に建てた家は、退職とともに娘に譲る。築70年以上になる赤岩地区の生家に戻り、畑を耕し、毎日のんびり過ごそうと考えている。
「観光客と交流したり、若いころにできなかった畑作をしたり、定年退職者には最高のぜいたくだな」。重伝建の地で踏み出す新たな生活を楽しみに、残された会社員の時を味わっている。 |