和裁 生地の知識で扱いに差  
岡田 和浩さん(32)  桐生市仲町 掲載日:2008/04/12

足の指で布を引っ張りながら縫う和浩さん(左)と針山

を使って縫う由理さん
足の指で布を引っ張りながら縫う和浩さん
(左)と針山 を使って縫う由理さん

 右手中指に付けた指革で針を押す。見る間に布に糸が通る。「運針」は和裁の基本。反物を着物に仕立てる“魔法”の技術でもある。
  「修業に入ると、まず運針の練習を繰り返す。できないと前に進まず、仕事にならない。和裁のすべてが詰まっている」
  70年続く岡田和裁研究所に生まれた。父、成雄さん(65)の仕事姿を見て育った。県内の大学を卒業後、東京・上目黒の仕立屋へ修業に出た。
  「1年目は長じゅばんや浴衣を縫った。2年目から本格的な着物を任された。『1日1枚を仕上げる』が目標で、きつくて半分以上の生徒が辞めた。朝から夜中まで縫い続けたことも多かった」
  4年半後の2002年に帰郷、同研究所の副所長に。04年11月、修業先で出会った由理さん(26)と結婚した。
  群馬和裁専門学院の副校長を兼務、10−20代の生徒を指導する。
  「和裁は残布がほとんど出ない。寸法を測って仕立てるため、SやMなどのサイズもない。着る人がきれいに見えるようにすることが大切。一枚の布が振り袖や留め袖、小紋の着物など多種多様な姿に変わる。できたときの達成感は格別」
  布を触るうちに、絹の持つ特性を知った。「絹は生きていて伸び縮みする。湿気を嫌うため、仕事の時は除湿器を入れている。ポリエステルと違いコテが効きやすい。仕立てやすく、逆に難しくもある。扱いは生地をどれだけ知っているかで経験の差が出る」
  祭りの時、生徒と自分で仕立てた着物を着て街を歩く。「和服は春夏秋冬の季節感を感じることができる。余った布は着物に縫い込んで大切に保存する。仕立て直しの時に使えば、子や孫のものに生まれ変わる」
  「着物を着る機会は少なくなっているが、都会に比べれば群馬は多いと思う。最初は既製品でいい。それがきっかけとなり、着物の良さを多くの人に知ってほしい」
  一昨年、長男の悠吾君(1)が生まれた。
  「息子が跡を継ぐかどうかは分からないし、本人の自由にさせてあげたい。進路は自分で決めてほしいから。その選択肢の一つとして、和裁の道を残したい」
(桐生支局 五十嵐啓介)