遠い昔、小学生の私は毎朝、母のひく座繰りののカラカラという音で目を覚ました。当時、前橋は製糸の町として盛んで、婦人たちは皆、座繰りをひいていて、その音が町中流れていました。
祖父はよく母の糸を「とても質がよく、暗闇でも分かる。つや、なめらかさや、糸の目もたくさん出てどんな人にも負けない製糸の名人だ」と褒めたたえていました。
毎朝早くから繭を煮て、繭が透き通ってくると、母は器用な手さばきで左手で座繰りを回しました。右手で熱湯の中の繭を上手に操作すると、美しい糸となり、座繰りに流れていきます。
群馬の人間として、ぜひ若い人たちにあの座繰りの音を聞かせてあげたい。故郷の歴史でもある絹の前身の繭を見せてあげたい。私の願望です。
昔の婦人は皆、女の職業として座繰りをひいて生計を立てていたことを思っていただききたいものです。
母亡き今、母の手にいつも繭のにおいがついてたことが懐かしく思い出されます。。
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