上毛新聞社「21世紀のシルクカントリー群馬」キャンペーン

シルクカントリー群馬
Silkcountry Gunma21
シルクカントリー群馬イメージ

《シルクカントリーin桐生》 織都の可能性切り開け
掲載日・2009/02/23
◎頑張る機屋応援して 後藤 隆造さん(71)
◎着て歩きたい和服を 泉 太郎さん(44)
◎群馬の絹知り挑戦へ 江原 毅さん(73)
◎プレゼンの勉強必要 三田 修武さん(45)
◎最先端の素材も活用 岩野 武彦さん(67)

後藤 隆造さん
後藤 隆造さん

ごとう・たかぞう 桐生工高卒。1870(明治3)年創業の合資会社「後藤」の4代目社長。昨年4月から桐生織物協同組合理事長。桐生市東。

泉 太郎さん
泉 太郎さん

いずみ・たろう 日本大卒。会社勤務を経て、1986年10月、家業の泉織物に入社。2006年5月、社長に就任した。桐生織伝統工芸士。桐生市東。

江原 毅さん
江原 毅さん

えばら・たけし 青山学院大卒。江雅織物社長。「群馬の絹」活性化研究会長を昨年6月まで務める。桐生織伝統工芸士会会長。桐生市広沢町。

三田 修武さん
三田 修武さん

みた・おさむ 国学院大卒。デザイン会社に4年間勤務。2001年秋に家業のミタショーに入社し、現在は常務として企画開発部門を担う。桐生市東。

岩野 武彦さん
岩野 武彦さん

いわの・たけひこ 早稲田大卒。1970年秋、共立織物に入社。主に営業を担当して96年社長に就任。桐生織物協同組合副理事長、広幅協議会長。桐生市菱町

―和装の三人に聞きたい。長い歴史の中で、苦しい時代を迎えた。

 本県の養蚕、製糸、織物の三つの産業は、日本の近代化を支える大きな役割を果たした。三人はこの鼎談を前に、世界遺産の国内暫定リストに記載された「富岡製糸場と絹産業遺産群」を中心に、官営富岡製糸場(富岡市)、赤岩地区養蚕農家群(六合村)、薄根の大桑(沼田市)、境島村養蚕農家群(伊勢崎市)などを視察し、印象を語り合った。
 鬼頭さんは「島村は洪水と隣り合わせの地域なのに、大きな養蚕農家が林立している。外国の文化も流入していた」、大熊さんは「薄根の大桑のような桑が昔は島村にもあった。こうしたものが明治の養蚕を支えていた」などと述べ、遺産群を豊かさの象徴ととらえた。
 内山さんは、上野村の山の斜面に作られた桑畑の名残である石組みを紹介。また、昔作られた小さなコンクリート堰せきにも触れ、「かつての人たちは、いろいろな力を持っていた」などと語った。

◎価値
 本県の絹産業の歴史で特徴的なのが組合製糸。当時の最先端技術を駆使した富岡製糸場ができたにもかかわらず、県内で器械製糸が一気に広まることはなかった。半面、碓氷社など、在来の上州座繰り製糸による組合製糸が生まれ、生産量が富岡製糸場を上回る時期もあった。
 鬼頭さんは「座繰りがそのままあったわけではなく、農家の人が技術革新を試みた。それが群馬の製糸であり日本の近代化を支えることにもなった」と、座繰り技術のもつ意味の大きさを強調し、「技術移転は、在来技術や住民、自然と連携して初めて可能になる」と指摘。
 「群馬ではそれが行われた。群馬の絹遺産群は、技術を途上国などに定着させる際に必要なことや、技術移転が地域にどんな意味を与え、どんな人が支えたのかなどを見せてくれる」とし、そこに価値があるとした。
 内山さんは、絹の文化について、「豊かさ」を考えるヒントになると述べた。
 「今、豊かな社会と言えるのだろうか。発想があまりに貧しい。その中で、絹産業遺産群がつくられた明治の群馬は、いろいろなヒントを与えてくれる。地域の力や人間の力など、今、取り戻さなければならないものがたくさんあった」

◎機運
 本県で世界遺産登録推進運動がスタートして約三年。運動と連動して、各地で絹の文化や記憶を核に、地域を見直す動きも始まっている。これに対して運動の在り方や成果について意見が出された。
 鬼頭さんは、白神山地(青森県、秋田県)が世界遺産に登録された後、地域から離れてしまったなどと指摘したうえで、「群馬では絹の文化の象徴として遺産群を世界遺産に登録して、それを軸に自分たちの地域で何かを残したり、生きた遺産として活用しながら、継承するきっかけにしたいという雰囲気がある」と述べた。
 大熊さんは「私たちの先輩が、どうやってきたのか、歴史的な再評価をすべき。絹の文化ももう一度脚光を浴びれば、群馬の人は誇りを持てる。誇りを持つことが必要。そのために『世界遺産にならなくてもいいから、世界遺産にする運動』をずっと続ければいい。人間として生きていく誇りや喜びを、取り戻すことが肝心」などと発言。
 世界遺産に登録されることよりも、それをきっかけに地域の歴史や文化を見詰め直す機運が生まれることを成果ととらえるべきではないか、との見方を示した。(小林聡)

◎多様な活動の共通点を探る 28日から前橋、片品で地域創造フォーラム
 「ぐんま地域創造フォーラム」は二十八日に前橋市大手町の群馬会館、二十九、三十の両日は片品村で開催する。「里の哲学・繋(つな)ぐ思想」をテーマに、内山さん、大熊さん、鬼頭さんの三人の鼎談に、県内外で地域、文化活動に取り組む人たちも加わる“車座”のフォーラムとする。
 フォーラムの狙いは、県内のさまざまな団体が取り組んでいる地域活動の価値、意味を問い直すこと。長く続けていたり、団塊の世代の受け皿をとしても期待される地域活動を、絹の文化を手掛かりに、県外の人の視点も交えて見詰め直し、多様な活動の根底にある共通点を探ることで、深みや広がりを持たせるきっかけをつくる。
 県と県地域づくり協議会やぐんま文化会議のメンバーらで組織する実行委員会、内山さんら三人による「三人委員会哲学塾」などが主催。問い合わせ、申し込みは県地域創造課(電話027・226・2371)へ。

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