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下仁田町の荒船風穴跡
下仁田町の荒船風穴跡
中之条町の東谷風穴跡
中之条町の東谷風穴跡

荒船・東谷風穴を答申 「繭増産に寄与」評価 国史跡に文化審
掲載日 2009/11/21

国の文化審議会(西原鈴子会長)は20日、天然の冷気を利用して蚕の卵を冷蔵した施設「荒船・東あずまや谷(栃窪)風穴蚕種貯蔵所跡」(下仁田町南野牧、中之条町赤坂)の史跡指定など、計20件の指定・登録を川端達夫文部科学相に答申した。明治後期から昭和初期、年間複数回の養蚕を可能にし、増産に寄与した歴史的価値などが評価された。両風穴は本県の世界遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成。史跡指定により10カ所の遺産のうち8カ所が世界遺産登録条件の国の法的保護を受けることになり、遺産群の内容に厚みが増す。  風穴は機械式冷蔵庫が普及する以前、冷風が吹き出す地形現象を活用して山間地に数多く設けられた。蚕種を低温保存することでふ化の時期を調節でき、従来は毎年春に1回程度だった養蚕を複数回に増やし、日本の生糸輸出需要を支える原料繭の増産に大きく貢献した。  大正時代の農商務省の記録によると全国32道県で約240カ所の風穴が稼働し、本県は7カ所。本年度の県教委の調査では、現存が確認できたのは87カ所だった。多くが山に埋もれて消滅した中で、荒船、東谷両風穴は歴史的価値のほか、規模と残存状況でも貴重な史跡であると評価された。  荒船風穴は1905(明治38)年から地元の養蚕家、庭屋静太郎、千寿親子によって3棟建設され、面積4649平方メートル。蚕種貯蔵能力は110万枚と全国一を誇り、取引先は東北から九州まで2府31県に上った。  東谷風穴は地元の有力者、奥木仙五郎が1906(明治39)年に整備着手し、面積2579平方メートル。貯蔵能力は10万枚と推定される。主に吾妻郡内が取引範囲で、地域単位の施設としては全国有数の規模だった。両風穴ともに現在は貯蔵用の穴に積み上げた石垣部分が残っている。  来年1月ごろに官報告示され、県内の国史跡は46件となる。答申には、国天然記念物の三波川(サクラ、藤岡市)の地番が一部誤っていたとして、正しい地域の追加指定も含まれている。 ◎絹産業の根幹担う不可欠の構成遺産  荒船・東谷両風穴は、養蚕、製糸、流通の遺産で構成する「富岡製糸場と絹産業遺産群」の中で、蚕種の保存という絹産業の根幹を担った点で欠かせない構成遺産となっている。  また、荒船風穴を建設した庭屋千寿は、関連施設が同遺産群に含まれている養蚕教育機関、高山社(藤岡市)で学んだ経験を生かして整備に臨んでおり、構成遺産が強い結びつきがあったことを示す意味でも、世界遺産の登録条件を満たした意義は大きい。  構成遺産の登録条件のクリアは今年7月の高山社跡の史跡指定に続く。未指定は旧上野鉄道関連施設(下仁田町)と旧甘楽社小幡組倉庫(甘楽町)だけとなった。

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