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天蚕飼育用のハウス作りをする松井さん(左)と登坂さん
天蚕飼育用のハウス作りをする松井さん(左)と登坂さん

「繊維のダイヤ」天蚕飼育に挑戦 松井さん(桐生)、JR退社へ 県内唯一の農家で修業
掲載日2010/03/24

「繊維のダイヤモンド」と呼ばれる糸をはく天蚕(てんさん)の飼育に挑戦している人がいる。桐生市川内町の松井定夫さん(56)は天蚕飼育に専念するため、36年間勤めたJR東日本を5月末に退職する。今月上旬には、自宅から程近い所有地に餌となるクヌギの木を植栽、現在は天蚕を外敵から守るための囲い作りに追われている。
天蚕はヤママユの別称で、はく糸が薄緑色の光沢を持つことから、「繊維のダイヤモンド」とも称される。
天蚕飼育に興味を持ったのは、18年前から独学している染色がきっかけ。自然本来の色にこだわって染料に桑や藍(あい)、蚕のふんを使用した。その際、蚕のふんが醸し出す色彩の美しさに魅了され、天蚕に心を奪われた。
「自分で飼育した天蚕のふんを使用した蚕沙染(さんしゃぞめ)に挑戦したい」。松井さんは昨年2月、中之条町出身の妻、ひろ子さん(54)の情報を頼りに県内で唯一の天蚕農家、登坂昭夫さん(67)=同町山田=を訪ね、飼育法の指導を依頼した。
登坂さん方での修業が決まると、松井さんは仕事を休職。月に5回ほど自宅から片道2時間かけて往復、外敵から天蚕を守る方法やクヌギの若葉に卵を張り付ける「山付け」を学んだ。
松井さんは昨年5月、自宅近くに広さ約825平方メートルの土地を天蚕飼育用に購入、1年かけて整備してきた。その土地に今月、天蚕の餌となるクヌギ20本を植栽し、現在は上空の外敵から天蚕を守るための囲い作りに取り組んでいる。今後は5月末ごろから山付けを行い、7月中旬の収穫を予定している。
登坂さんによると、天蚕はサルの大好物で、カラスやタヌキなど外敵も多い。時には山付けした数の半数に及ばない収穫量の時もあるという。
松井さんは「桐生織物の発祥の地と言われる川内町で、天蚕のふんでの蚕沙染や天蚕の繭を糸にして織物にも挑戦したい。将来は天蚕農家としてやっていきたい」と目を輝かせ、今夏の緑色の繭への期待を膨らませている。

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