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Vol.4
June 2006
Contents
vol.4表紙

<大人のアウトドア>
 –"リトルカナダ"奥利根をアウトドアの達人と行く。
 –野反湖のノゾリキスゲ極上の山、湖、そして花
 –武尊牧場のレンゲツツジ花の牧場をゆっくりウオーク
 –小平の里のサルスベリ盛夏を鮮烈に彩る
 –武具脱の池のワタスゲ心躍る高山植物の宝庫

 –田舎暮らしQ&A
 –コラム「お酒とレース」

<わが街を磨く>
 –人と人との結びつきを回復する「街かど農園」
 –ごみの山から季節の花咲く堤防に

<MY DREAM FILE>
 –チョウの生態通じ自然保護啓発

<わが家の簡単・手作り料理>
 –ナン/キーマカレー/ココナツプリン/梅酒入りアイスティー

<いまさら聞けない年金の基礎知識>
 –知っておきたい年金の基本
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わが街を磨く
 人と人との結びつきを回復する「街かど農園」
  都市部に暮らす人が隣人と言葉を交わさなくなったのはいつからだろう。土を覆うコンクリートは人間の心も塞いでしまったかのようだ。だが、都市生活の再生を胸に、ビルの谷間のわずかな土地に果樹を植え、収穫を楽しんでいる人がいる。競うように交互に実を付ける果樹は、街にささやかな緑と、道行く人々との新しいつながりを生んでいる。前橋市街地に自称「街かど農園」をつくった医師 千木良正機さんの試みを紹介しよう。
千木良正機さん(53)【前橋市表町】
果樹の手入れをする千木良さん
果樹の手入れをする千木良さん

ビルに囲まれた狭小地に間断なく実る種々の果樹
 JR前橋駅前から延びるケヤキ並木。この通りから100mほど西に千木良正機さんの「街かど農園」がある。駅から徒歩2分、周囲2をビルと住宅に囲まれた都市環境は、アスファルトとコンクリートに固められた無機質なイメージが漂い、たわわに実る果樹園が一角にあるとは想像できない。

「街かど農園」の主役、スモモ、アンズ、ブラックベリー(千木良さん提供)
「街かど農園」の主役、スモモ、アンズ、ブラックベリー(千木良さん提供)

 現地に10年前に引っ越して来た。当初から果樹園の構想があったわけではない。自宅隣の空いた土地に、「何かおいしいものを作ろうと考えた」だけだった。しかし3×5mの細長い土地に日が当たるのは、1日数時間だけ。キュウリやナスなどの野菜を作ってみたが、隣接する3階建てのビルに日光は遮られ、期待ほど育たなかった。

 そこでまず知人からもらったアンズの実生の苗を植えてみた。「ケーキの素材を作ろう」という皮算用も働いた。ホームセンターで購入する600円ほどの苗木が地面を覆うようになったのはそれからだ。

 千木良家の食欲を引き受けて形を成した果樹園は現在、ビワ3本、アンズ2本、スモモ種のメスレー2本、ソルダム1本、クリ3本、プルーン2本のほか、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリーなどが所狭しと存在感を示す。それらは春先、咲き乱れる花で人々を楽しませた後、初夏から競うように実をつけ、秋のクリへとつないでいく。10年前に高さ30cmだったアンズの苗も立派な木となり、昨年は10kgの収穫があった。

 「夏場の果物はほぼ自給に近いですね。摘み取るのが忙しいけど、やっぱり楽しみです」。そう話すのは、もっぱら"加工"を担当する妻の佳子さんだ。アンズやベリー類はジャムやゼリー、シロップに、クリはケーキのモンブランや渋皮煮となって食卓を彩る。もちろんそのまま食べることも多く、いまや高級品と化したビワは、店で買って来るものより断然おいしいという。

果実に誘われて通行人が声を掛ける
 果樹を育てる肥料は完全有機。ケヤキ並木の落ち葉を腐葉土にし、台所から出る生ごみや鶏糞と土に埋め込む。

 「単純に労働力を考えると、本当はばかばかしいんですよ」(千木良さん)。毎年11月ごろになると通りは落ち葉の山。土のう袋と熊手でかき集めて運ぶが、思いのほか重労働という。「休日の早朝に運動を兼ねて」と前向きに考えてはいるものの、シーズン中に50袋もの落ち葉を集める身体的負担は大きい。

 「でも最近は集めておいてくれる商店主がいて、ちょっとうれしい気持ちになります。声を掛けてくれるお年寄りと話す機会も増えました」。街かどの果樹園が交流のきっかけを生んだ。木々の手入れをしている時も、生け垣越しに言葉を交わし、樹名を尋ねる人が増えた。木そのものには関心を示さない通行人がアンズやクリの実を見上げていたり、下校途中の子どもたちが立ち寄ることもある。

 「都市化は仕方ない面があるけど、人と人の結びつきが薄れているのを残念に思っていた。果実を挟んで互いに言葉を掛け合い、わずかでも人々のつながりが回復できればいい」(千木良さん)。たくさん取れるようになったら、近所におすそ分けしたい。庭先になった柿を近所の悪がきが勝手にもいでいく、「そんな昔話が現実になったら」と夢見ている。

 努力のかいあって土は年ごとに黒さを増し、ミミズやテントウムシ、ハチ、カエルさえ姿を見せるようになった。街の中心部に虫食いのように増えた遊休地は雑草が伸び放題だが、千木良さんには貴重な資源に見える。

 「自治体組織が主体となって遊休地を街かど農園に変え、市民が好き勝手に果実を食べられるようになれば、都市のコミュニティー再生の一助になるのではないか」。渋川市と前橋市北部でも同様の試みを始めた。あくまでも趣味として「お金をかけず、楽しみながらやっていきたい」という。「土に足の裏をつけて都市生活を再建すること」が願いである。

 
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