「大川原化工機」(横浜市)の大川原正明社長(76)らが、生物兵器製造に転用可能な装置を無許可輸出したとして外為法違反容疑で警視庁公安部に逮捕された後に起訴が取り消された冤罪事件を巡り、社長らが東京都と国に賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。太田晃詳裁判長は「嫌疑成立の判断に基本的な問題があり、合理的根拠を欠いた」として一審に続き逮捕・起訴の違法性を認め、計約1億6600万円の賠償を命じた。一審から約400万円増額した。
問題となったのは、霧状の液体を熱風で瞬時に粉末化する「噴霧乾燥装置」。輸出規制対象の「滅菌または殺菌できるもの」に当たるかどうかが判然としていなかった。
判決は、警視庁公安部は逮捕前に同社従業員から規制対象に該当しないと聞いていたにもかかわらず、通常求められる追加捜査をしなかったと指摘。元取締役の取り調べでは、発言していない内容の書面を作成したとも述べた。
担当検事は弁護人の指摘を受けて機械内の温度測定をしていれば、規制対象にならないとし、起訴も違法だとした。
大川原化工機への捜査を巡る訴訟の控訴審判決を受け、「全面勝訴」と書かれた紙を手にする大川原正明社長(左から3人目)ら=28日午後、東京高裁前
東京都と国に賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁に向かう大川原化工機の大川原正明社長(右から2人目)ら=28日午後