政府は30日、日本産水産物の対中輸出再開に向けた手続きを開始することで中国側と合意したと発表した。規制が緩和されれば、2023年8月の東京電力福島第1原発処理水の海洋放出をきっかけに中国が水産物輸入を全面停止して以降初で、日中間の懸案解消へ一歩前進する。37道府県が対象となり、福島県や茨城県など10都県は除外される見通し。政府は規制の全面撤廃を求めて働きかけを続ける。
第2次トランプ米政権が1月に発足し、米中の貿易摩擦が激化した。中国はアジア各国との関係強化に動いており、日本に対する強硬姿勢も軟化させ歩み寄ったとみられる。
農林水産省と中国当局が28日に北京で4回目の協議を実施し、まとまった。手続きには、中国側が日本の輸出事業者を登録する必要がある。具体的な再開時期は未定だが、輸出再開まで少なくとも数カ月程度はかかるとみられる。
農水省によると、輸出には中国側の懸念を払拭するため、食品の製造加工施設での放射性物質の検査に加え、産地や衛生に関する証明書が必要になる。
農林水産物・食品の輸出拡大に向けた閣僚会議で、発言する林官房長官(中央)。右は小泉農相=30日午前、首相官邸